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 参院選は全議席が確定し、自民、公明両党は非改選議席を含め過半数を割った。昨秋の衆院選に続く与党の敗北は、有権者が政権に「不信任」を突き付けたに等しい。石破茂首相の責任は免れない。

 首相はきのう、自民党総裁として会見し、続投の意向を表明した。森山裕幹事長をはじめとする党執行部も当面続投させる方針だ。歴史的大敗の責任を誰もとろうとしない姿勢に国民の理解は得られるだろうか。

 自民は全国に32ある「1人区」で負け越し、公明も公示前の議席数を下回った。兵庫ではかろうじて自公が議席を維持したが野党系無所属に大差をつけられた。有権者の不信や怒りの表れにほかならない。

 昨年10月に石破政権が発足して以来、物価高は収束せず、将来不安に応える社会保障の改革も手付かずのままだ。裏金事件の真相解明を進めず、企業・団体献金の見直しを先送りするなど政治不信は払拭できていない。閣僚や所属議員の失言への対処も後手に回るなど、首相の指導力の欠如も露呈した。敗因は、第一に自らの政権運営にあると受け止めるべきだ。

 選挙結果について首相は「痛恨の極みだ」と陳謝しつつ、「国政に停滞は許されない。比較第1党としての責任を果たしていく」と続投の理由を語った。

 だが党内からも退陣を求める声が上がり首相の求心力低下は著しい。国益をかけた対米関税交渉など難局を乗り切れるか疑問だ。

 衆参両院で少数与党となり、予算案や法案の審議は一層難しさを増す。首相は「野党との真摯(しんし)な議論を通じ新たな政治の在り方に一致点を見いだしたい」と述べたが、連立の枠組み拡大は考えていないとした。

 野党第1党の立憲民主党は伸び悩み、政権批判票の受け皿になりきれなかった。一方で既存の政治への不満を取り込んだ国民民主党や参政党が躍進し存在感を増した。ただ各党の政策は違いが大きく、連携して政権交代を迫る体制を整えるのは容易ではない。

 首相は政策ごとに協力できる野党を探すことになる。当面は物価高対策で与野党の対立軸となった消費税減税や給付について一致点を探り、財源の手当てを含めて具体化できるかが焦点だ。各党とも安易な「数合わせ」に流れず、政策本位での政党間協議を強化する必要がある。

 国会は長く続いた「1強政治」が崩れ、それに代わる政党政治の在り方を模索する時期に入ったと言える。各党とも国民の将来により重い責任を負ったと自覚し、多様な民意を政策に反映させる道を見いださねばならない。