財務省がまとめた2026年度政府予算の概算要求は、社会保障費や防衛費の増加などにより総額122兆4454億円となった。3年連続で過去最大を更新し、初めて120兆円台に乗る。
今回は物価高対策などとして、各省庁の要求額は本年度予算から最大20%上積みが認められた。これでは金額が膨れあがるのは当然である。
長期金利の上昇に対応して国債の想定金利を引き上げ、利払い費は32・4兆円と初めて30兆円を超えた。巨額の債務を抱えながら歳出拡大を続ける財政に、市場が懸念を抱いていることも金利を押し上げる要因だ。政府は警告を直視して、財政規律を取り戻さなければならない。
項目別で要求額が最大なのは今回も社会保障費で、厚生労働省は32・9兆円を計上した。高齢化に伴う自然増は4千億円を見込むが、介護や福祉に携わる人材の処遇改善は明記せず、年末の予算編成までに具体額を決める。要求額がさらに増えるのは確実で、負担見直しの議論は避けられない。
防衛省は過去最大の8・8兆円を要求した。防衛力の抜本強化に向け5年間で計43兆円に増やすとの目標に基づくが、財源に掲げた法人、所得、たばこの3税の引き上げは先送りが続く。金額ありきでなく、厳しい財政状況を見据えた防衛費の方向性を考え直す必要がある。
石破政権は7月の参院選で衆院とともに少数与党に転落した。今回は例年と異なり、野党の要望に応じなければ予算案の成立が望めない。
野党は11月1日からガソリン税の暫定税率を廃止するよう訴えている。年1兆円減る税収の代替策として税収の上振れ分や特別会計の活用を提案しているが、地方の税収減にもつながるだけに、恒久的な財源を探す必要がある。
日本維新の会が与党と合意した高校授業料の無償化は制度設計が固まっておらず、文部科学省は今回の概算要求で金額を示さない「事項要求」とした。4千億円前後とみられる財源の確保はこれからだ。
高度成長期は、増え続ける税収の分配が政治の主眼だった。しかし人口減と低成長で大幅な税収増が見込めない現在、財源の確保や、国民が納得できる負担のあり方を描くことが野党にも求められている。
各党が民意をたてに政策支出の拡大に走れば、財政悪化が加速し金利上昇に歯止めがかからなくなる。国債残高は増え、次代へのツケは増えるばかりである。
省庁と与党の協議だけで事実上決めていた従前の予算編成の発想を改め、野党も責任を持って議論に加わる手法を探るべきだ。