公明党の斉藤鉄夫代表が、自民党との連立政権を離脱する方針を高市早苗自民党総裁に伝えた。
引き金となったのは自民の派閥裏金事件への対応だ。高市新総裁選出に伴う連立協議で、公明は事件の全容解明と企業・団体献金の規制強化を求めたが自民は応じなかった。事件を「決着済み」とするトップの姿勢が、連立破綻を招いたと言える。
公明は衆院選小選挙区を中心とする選挙協力を白紙とし、臨時国会の首相指名選挙で高市氏に投票しない。衆参両院で過半数を持たない自民党単独の政権運営は、さらに不安定さを増す。野党がまとまれば政権交代も視野に入る。
公明の決断の背景には、後を絶たない「政治とカネ」問題に向けられた国民の厳しい目がある。事件を受けた改革案の協議は自民の抵抗でまとまらず、衆院選に続き、参院選でも自公政権に厳しい審判が下った。斉藤代表は「自民は『検討する』と言うばかりで、この1年余り、何も進まなかった」と非難し、「自民の不祥事を国民に説明し、選挙で応援するのは限界」と述べた。
高市総裁は「一方的に離脱を通告された」と公明の対応に不満をもらした。だが、参院選総括では自民も政治とカネを主な敗因とし、解党的な出直しを誓ったはずだ。にもかかわらず、党再生をかけた総裁選を勝ち抜いた高市氏は抜本改革に踏み出そうとしなかった。そればかりか裏金事件で党として処分した萩生田光一氏を要職に起用した。
自公連立の歩みの中では、これまでにも歴史認識や安全保障政策を巡り、公明が連立離脱をちらつかせる場面は繰り返されたが、決別には至らなかった。自民側は、今回も公明は連立離脱まではしないと高をくくっていたのではないか。判断を見誤り、政治の混乱を一層深めた総裁の責任は免れない。
参院選後の政治空白はすでに2カ月半に及ぶ。首相指名選挙が行われる臨時国会の召集は遅れ、物価高対策を含む経済対策の裏付けとなる補正予算の年内成立も危ぶまれる。比較第1党として現政権を担う自民は、公明を含む野党に協力を求め、早期に事態を打開する必要がある。
一方、公明の存在意義も問われる。斉藤代表は自公連立の26年間を「我慢してきた面がたくさんある」と振り返り、「自公の枠組みから離れ新しい政治を目指す」と述べた。だが、与党でなくなった少数政党に何ができるのか。道は険しい。まずはぶれない「中道・改革勢力の軸」を具体的な政策で示すべきだ。
与野党は協力し、多党化時代にふさわしい新たな合意形成の仕組みを見いださねばならない。