2026年度の診療報酬改定を巡り、政府は医師の技術料や人件費に当たる「本体」部分を3・09%引き上げることを決めた。高度医療や救急医療を担う公的病院を中心に経営難が深刻化しており、30年ぶりに3%を超える高い水準となる。
診療報酬は原則2年ごとに改定される公定価格であり、物価や人件費の上昇分を直ちに反映できないため、医療機関の経営悪化の要因となっていた。地域医療を守るために経費増に合わせた引き上げは妥当だ。
ただ、中核病院の関係者は「コスト増加分には到底足りない」と指摘する。診療報酬の配分では優先的に守るべき医療は何かを見極め、めりはりを利かせる必要がある。
少子高齢化が加速する中、医療費の膨張を抑える方策も重要だ。
日本維新の会は現役世代の負担減へ公的医療保険料の引き下げを掲げ、自民党との政権合意書にも明記した。診療報酬本体を引き上げれば、窓口負担や公費投入を増やさない限り保険料値上げの要因になる。
抑制策として市販薬と効能が似た「OTC類似薬」を公的医療保険の対象から外す案は、患者団体や日本医師会の反対で見送った。保険適用を維持したまま、77成分について27年3月から料金を上乗せする。
長期間薬を使い続ける必要のある難病やがんの患者を追加負担の対象外としたのは当然だ。一方で、軽症の人が薬を安く手に入れるためだけに医療機関を受診するのが適切かどうかは今後も議論の余地がある。
政府は昨年、高額療養費制度について月々の自己負担上限額の引き上げを決めたが、がんの患者団体などの反発を受け撤回した。政府は引き上げ額をおおむね圧縮し、所得区分を細分化した上で27年8月に最大38%増とする見直し案を示した。
最大の上げ幅となる年収約650万~770万円の区分では上限額が月約3万円増の約11万円となり、軽い負担とは言えない。受診控えなど影響がないか見極める必要がある。
診療報酬のうち医薬品などの「薬価」部分は0・87%引き下げる。本体部分と合わせた全体の伸びは2・22%となる。
近年は医薬品の提供体制のもろさが露呈している。安価な後発薬(ジェネリック)を中心に不足が慢性化し、薬によっては納入価格が薬価を上回る「逆ザヤ」が生じている。海外の新薬などが国内で発売されない「ドラッグ・ロス」の一因とも指摘される。マイナス改定が薬不足に拍車をかけないか注視すべきだ。
医療費をどう抑制するか。効率化を図り、持続的な医療提供を可能とする改革が今後も欠かせない。与野党で議論を尽くしてもらいたい。























