東京都心から1900キロ以上離れた太平洋に浮かぶ南鳥島沖で、海洋研究開発機構の探査船が水深約5600メートルの海底からレアアース(希土類)を含んだ泥の採取に成功した。成分の分析や採取方法の検証などを急ぎ、国産レアアースとして産業利用が可能かどうかを2028年3月までに検討する。
レアアースは電気自動車のモーターや各種の電子材料に必要不可欠な物質で、今後も需要が伸びると予測されるが、世界の生産量の7割は中国が占める。日本も6割以上を中国から調達している。米トランプ政権の高関税に対抗して輸出を制限するなど中国は外交のカードともみなしており、国産確保は経済安全保障上、極めて重要だ。
ただ、中国頼みからの脱却が今回の採取成功で一朝一夕に実現するわけではない。産業利用に向けては、越えねばならない壁がいくつもある。それを一つ一つ克服し、長期的な視野で戦略を練るべきだ。
南鳥島沖のレアアース泥の存在は12年に東京大などのチームが発表し注目を集めていた。埋蔵量は国内消費量の少なくとも数百年分に相当するとの研究発表もあり、政府は18年から産学官で採掘手法の検討などを進めてきた。
実用化のめどが立てば、日本にとって貴重な資源だが、技術面と採算面が課題となる。今回はあくまで試掘であり、27年2月にも1日350トンの泥を掘り出す計画だ。しかし深海で掘削装置を本格的に稼働させ、長大なパイプを接続する作業は容易ではない。掘り出した泥を精製し、レアアースを取り出すための拠点の整備も不可欠だ。
仮にこれらをクリアできても、生産コストが中国産を大きく上回れば需要は見込めない。国産奨励を目的に政府が補助するのも一案だが、財政を圧迫する上、コスト削減への努力が進まない可能性がある。
今回の衆院選ではレアアース確保を多くの政党が公約に盛り込んだ。高市早苗首相は街頭演説で南鳥島の採取成功を取り上げ「これで日本はレアアースに困らない国になっていく」と述べたが、多くの課題を無視して、希望的観測を事実のように述べたのは無責任ではないか。
台湾有事は存立危機事態になり得るとした首相の国会答弁に反発し、中国は軍民両用品目の対日輸出規制を強化した。だがそのうちレアアースの一部は輸出が許可されていたことが判明した。日本に揺さぶりをかける狙いとみられる。
当面必要となる資源の安定調達へ中国との関係修復に努め、国内で確保する道筋も同時に探る。それが日本の採るべき現実的な道である。























