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 生成人工知能(AI)の進化と社会に浸透するスピードの速さに、教育現場で戸惑いが広がっている。

 文部科学省は2024年に改定した指針で生成AIを人間の能力を補助する「有用な道具」にもなり得るとし、発達段階を踏まえた慎重な利活用を呼びかける。「最後は人間が判断することが重要」と強調している。

 しかし、既に生成AIを日常的に使う子どもは多い。作文に不正利用するなどの事例も報告され、学校の対応が追いついていないのが現状だ。個人情報の流出やAIが誤った内容を回答するといったリスクについて、児童生徒が正しく理解するための教育が欠かせない。

 生成AIの先行導入校では、グループ討論で足りない視点を見つけたり、英会話の相手をさせたりと授業での活用が進む。保護者あての文書のたたき台を作成するなど教員の負担軽減につなげている学校もある。

 注目したいのは三田市の取り組みだ。学校や家庭で孤立しがちな児童生徒とのコミュニケーション手段として、独自にAIの可能性を探っている。

 三田市教育委員会と大阪教育大学は不登校対策を契機に、生成AIを使った対話アプリを開発し、実証実験を重ねる。複数の架空キャラクターを用意して、教員の介在なしに子どもが自由に対話できるようにした。市教委は「約1割いると言われる誰にも相談できない子を救いたい」と狙いを説明する。

 当初は市教委の中にも懐疑的な声があったが、実験に参加した小中学生の7割超が「正直に話せる」「信頼して話せる」と答え、手応えを感じているという。担当者は「デリケートな悩みにAIはうまく寄り添う回答をする」と話す。

 一方、課題もある。教員が対話に介入し始めると子どもが使わなくなるため、自殺をほのめかすような緊急性の高いSOSへの対応が難しい。AIで対話が完結するのであれば孤立の解消にはなりにくく、教員にどうつなぐかも問われよう。

 リアルな人間関係があってこそ力を発揮する教育現場が、生成AIとどう向き合うのか。利点や課題を共有し、活用方法を磨いてほしい。