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 兵庫県の告発文書問題に絡み、文書を作成した元西播磨県民局長(故人)の私的情報が県議3人に漏えいした問題で、県警捜査2課は、地方公務員法(守秘義務)違反の疑いで告発されていた井ノ本知明前総務部長を書類送検した。一方、県の第三者調査委員会の調べに対し、井ノ本氏は「知事や副知事の指示に基づき、総務部長の職責として行った」と主張。片山安孝元副知事も「必要かつ相当な範囲の根回しで、漏えいには当たらない」と違法性を否定している。行政における「根回し」とは何なのか。元鳥取県知事の片山善博・大正大特任教授にオンラインで聞いた。(広畑千春)

-片山さんも知事時代、根回しをしましたか?

 「ほとんどしなかったですね。根回しっていうのは、例えば議会をめぐって、行政の執行部と議員さんとの間で、執行部側から議員さんに働きかける場合によくあるんですね。これは議会に限らず、会社でもあります。株主総会の前に、大株主のところに議案の内容を事前に説明に行き、要は『反対しないでね』っていう働きかけをするわけです」

 「議会でも執行部が知事や市長提案の議案を議会に出しますから、『よろしくお取り計らいください』とやるのが一般的です。ただ私の場合は、説明をオープンにすればいい-という考えでしたから、異論・反論があれば、オープンの場で議論すればいい。反対意見があれば議会で言ってください。それに対して誠心誠意、答弁しますから-と、そういうやり方でした。ですが、一般的には、どの自治体でも『根回し』はやっていますね」

-今回、書類送検された前総務部長は斎藤元彦知事の指示を受け「職責として行った」と主張しています。これは「正当な根回し」に当たりますか。

 「根回し自体に定義があるわけじゃないから、要は自分たちのやりたいことを支障なく、できるだけ大ごとにせずにやりましょう、という作業です。今回のケースも、元県民局長の出した告発文書はまともなものじゃない、うそ八百ですよと。そもそも本人にはこんな非違行為があるんですよ、という話を議員と共有して、自分たちに批判が飛ばないようにしたのでしょう」

 「この問題で整理しておかないといけないのは、どんな事情や背景があろうと、公務員が知り得た情報の漏えいはやってはいけないことであり、目的が『県会議員との共有』であっても、漏らした時点で違法行為です。『根回しだからいい』とか、そんな理屈は成立しません」

-なぜ、やってはいけないのですか。

 「それは、元県民局長の個人情報は、それが公有パソコンに保存されていたとしても、公務員が職務上知り得た秘密だからです。元県民局長のプライバシー情報を議会で明らかにするよりも、『ここだけの内緒話です』と裏で話を進めた方が相手を傷つけない、と考える人もいるのでしょう。でも、それが職務上知り得た秘密である以上、漏らしたらだめなんです」

 「もう一度、論点を整理します。議会に議案を事前説明する一般的な『根回し』と、職務上知り得た秘密を使って告発者の信頼性を損なおうとした今回の『根回し』とは、意味合いが全く違います」

 「しかも、元県民局長のプライバシーの内容は、違法な手法によって取り寄せた可能性があります。パソコンの押収など、要は公益通報者保護法が禁じている公益通報者の特定、通報者探しをやったわけです。それはやってはいけないんです。すごく単純な話なんですよ」