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 スポーツ界がアスリートへの誹謗(ひぼう)中傷対策に本腰を入れ始めた。個人を侮辱する交流サイト(SNS)の投稿は後を絶たず、悪質なコメントに傷つき心の不調を訴える選手が相次ぐ。正当な批評とは言い難い言葉の暴力は、決して許されない。

 日本オリンピック委員会(JOC)の調査によると、SNSで誹謗中傷の被害に遭ったとするトップ選手は11%に上る。深刻な状況を受け、2月のミラノ・コルティナ冬季五輪ではJOCのスタッフがSNSの投稿を監視した。

 人工知能(AI)を使って侮蔑的な表現を含む投稿を抽出し、悪質性が高いと判断すればサイト管理者側へ削除要請を行った。史上最多のメダルを獲得した日本勢の活躍もあり、好意的な投稿が多かった一方、削除要請は2千件近くを数え、依然として問題は根深い。

 野球の国・地域別対抗戦「ワールド・ベースボール・クラシック」(WBC)でも、準々決勝のベネズエラ戦で逆転を許した日本代表チームの投手に非難が集中した。今大会は日本の2連覇が懸かり期待も大きかっただけにファンの落胆は理解できる。だからといって、個人攻撃は看過できない。

 注目度の高い野球はアマチュア選手も批判にさらされる。昨夏には野球部の不祥事が発覚した甲子園出場校に対して、在校生全体も標的とした誹謗が相次いだ。日本高校野球連盟は現在開催中の選抜大会で、新たにX(旧ツイッター)やヤフーニュースのコメント欄をチェックし、選手や監督、大会関係者を守る取り組みを進めている。

 経験を積み重ねたトップアスリートでもネット上の心ない言動が精神面で負担になる。高校生にはさらに深刻な心の傷を負わせかねない。高野連には毅然(きぜん)とした対応を求めたい。

 SNSで自ら動画や近況などを発信する選手も少なくない。喜びや悔しさを共有したファンの反応がさらに輪を広げ、新たなファンを開拓しているのも事実だ。競技そのものへの関心を高める役割も担っている。

 誹謗中傷を許すことなく、選手と多くの人たちがSNSで交流し合える道を模索しなければならない。