「紙かデジタルか」の二項対立を避け、双方の良さを生かしながら多様化する子どもたちの学びを充実させることが重要だ。
タブレット端末で閲覧するデジタル教科書が、紙と同様の正式な教科書として小中高校で2030年度から順次使われることになった。改正学校教育法などの関連法が成立し、文部科学省は今秋にも活用法や注意点に関する指針をまとめる。
現在使われているデジタル教科書は「代替教材」という位置付けで、紙の内容をそのままデジタル化している。新制度では、紙、完全デジタル、紙とデジタルを組み合わせた「ハイブリッド」の3種類から各教育委員会が選ぶ。ハイブリッドは、紙の教科書を使いながら端末で2次元コードを読み取って動画や音声を視聴する形が想定されている。
デジタル教科書を巡っては、マイナス面を懸念する声が少なくない。集中力が続かない、視力低下の恐れがある、ネット依存を強める-などだ。国会審議でも質問が相次ぎ、松本洋平文科相は小学4年以下の全教科に加え、小中高の国語、社会、道徳の3教科で完全デジタルを認めない考えを示した。
紙と比べてデジタル教材は情報量が多く、認知の負担になるとの指摘もある。文科省は、学習端末の使用が脳の発達に及ぼす影響を調査研究する方針という。多角的な視点でメリットとデメリットを見極め、政策に反映させる必要がある。
新制度の導入に当たり、小学低学年でのデジタル教科書使用に慎重を期すのは理解できる。だが、一律に「紙だけ」などと縛りをかけるのではなく、児童生徒の特性に合わせてデジタル教科書を併用するなどの柔軟な対応が求められる。
例えば、読み書きに困難がある学習障害(LD)の子どもの場合、デジタルの音声読み上げ機能が役に立つ。外国にルーツを持ち、日本語が十分でない子には、漢字にルビを振ったり、やさしい日本語に変換したりする機能があれば助けになる。教員にとっても指導上のプラス効果が期待できるだろう。
文科省は次期学習指導要領の柱の一つに「多様性の包摂」を掲げる。全ての子どもの学ぶ権利を保障する観点から、デジタルの活用法を磨いてもらいたい。端末の履歴などから得られるデータを基に、授業の改善や、一人一人の進度に合わせた指導法につなげることが望まれる。
教員が効果的にデジタル機能を使いこなせるよう、研修を強化するとともに気軽に相談できる体制を整えてほしい。通信環境の整備、改善を含め、ハードとソフトの両面で教育現場を支援する施策が欠かせない。























