チェック 特集 号砲まで1カ月(2完1)大会ゲスト・金哲彦さんに聞く2017/10/19

 11月19日に開催される第7回神戸マラソンまであと1カ月。「感謝と友情」の思いを込め、今年も約2万人のランナーが神戸のまちを駆け抜ける。大会ゲストの金哲彦さんに、神戸マラソンに臨む思いとランナーへのアドバイス、メッセージを聞いた。

-昨年初めて走った神戸マラソンの印象は。

 黄色い手袋をはめたランナーの皆さんが両手を上げ、「しあわせ運べるように」を歌うスタート前から感動して涙が出そうだった。沿道からは「がんばれ」ではなく「ありがとう」という言葉をもらい、こちらも応援してもらって「ありがとう」という気持ちになれた。震災という苦難に遭いながらも神戸の地に根付いて暮らしている人たちからの強さと温かさを感じた。

 2013年、ボストンマラソンがテロの標的にされるという悲しい事件があったが翌年「Boston strong」というメッセージを出し、今も世界のマラソン大会でその言葉が書かれたTシャツを着たランナーが走っているのを見かける。神戸マラソンのテーマである「感謝と友情」もまさにランナーの心を揺さぶり、応援する人、関係者が一体になれるメッセージだ。また走りたいと思わせる世界一のマラソン大会ではないか。

-コースについてはどんな印象を持ったか。

 山を望み、海を眺めることができる風光明媚(ふうこうめいび)なコースだ。アップダウンが激しいところもなく、初心者でも走りやすいコースだと感じた。後半の浜手バイパスの長い上り坂は上りが苦手な人にはかなり厳しいだろう。だが、単調でないからこそコースを走る楽しさがある。上り切った後の達成感と眺望を楽しみに乗り越えるのもまた一興だ。

-今年からポートアイランド内のゴール前のコースが3・8キロから1・3キロに短縮される。また、時間差のウエーブスタートのブロック割りもより細かくなった。

 昨年走ってみて、ポートアイランドに入ってからフィニッシュがすぐそこに見えているのに遠回りになることで心理的なつらさを感じた。これで一気にゴールを目指すことができるようになる。ウエーブスタートはスタート直後の混乱を防ぐためにも、タイムをより正確に測るためにも必要な手法だ。世界のメジャーな市民マラソン大会ではスタンダードになりつつあるが、日本ではまだ導入例が少ない。より走りやすいように、より満足度が高まるように改善を図っていく姿勢も素晴らしい。

-コースを走る上でランナーに技術面のアドバイスを。

 去年のように暑い中で本番を迎えた場合、5キロくらいから給水を取った方がいい。あと、小刻みな高低差があるが、前半の下りは追い抜きたい気持ちを抑えることも大切だ。そういった無理が後半になってたたるからだ。景色が楽しめる30キロくらいまでは体力を温存して後半の坂に備えるとよいだろう。浜手バイパスはだらだらと長い上りが続く。これ以上無理だというところまでいって歩くのではなく、その手前でペースを落とし、心拍数が回復してからまた走るという繰り返しで乗り切るとよい。マラソンは100%を出し切らず、70%に抑えてアベレージをキープすることを心がけてほしい。

ーランナーにメッセージを。

 11年前にがんを経験して以来、マラソンを通じて得られる人とのふれあい、達成感から生きることそのものを感じられるスポーツだということをより実感しながら走るようになった。単に体力を維持するというだけでなく、精神的な安寧をもたらしてくれるのがマラソンだ。42・195キロを走ることは苦しいが、応援、声の掛け合い、フィニッシュを目指す気持ちなどポジティブなものに囲まれることができる。また神戸マラソンを走れる喜びは大きい。一緒にハイタッチしながら走りましょう。

▽きん・てつひこ 1964年福岡県生まれ。早稲田大学在学中は箱根駅伝で活躍。卒業後、リクルートに入社し陸上競技部を創設。マラソンでは1987年別府大分毎日マラソン3位、89年東京国際マラソン3位などの成績を残した。引退後は監督に就任。2001年、クラブチーム・ニッポンランナーズを設立し、理事長に就任。市民ランナーから競技ランナーまで幅広く指導している。

 
 

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