忘れず、前へ-。19日、阪神・淡路大震災から23年近くたった街を舞台に開かれた第7回神戸マラソン(神戸新聞社など共催)。東日本大震災や熊本地震の被災地から参加した人も多く、それぞれの「あの日」を胸に駆け抜けた。失った家族への思いや教訓を、若き次世代へ。伝える決意、受け継ぐ勇気が、ランナーたちの背中を押した。
「お疲れさま!」
「頑張りました…」
今春から神戸学院大で学ぶ仙台出身の新妻彩乃さん(18)が、父で仙台市立七北田中学教頭の英敏さん(48)の首に完走メダルを掛け、ぎゅっと抱き合った。
娘はボランティア、父はランナー。親子の共演が神戸と仙台を結んだ。
英敏さんは2013年、人事交流で仙台市教委から神戸市教委に出向。そのとき遊びに訪れた彩乃さんは「街がきれいで人が優しい」と好きになり、神戸の大学を志した。
受験したのは同大学の社会防災学科。小6で経験した東日本大震災の恐怖を「忘れたくない」という気持ちからだった。復興を伝えるマラソンで何人もの完走者を迎え「神戸とつながれた気がする」と話す。
英敏さんは5回目の出場だが「娘が迎えてくれたから人生で最高の完走」。震災を伝えようと神戸で学ぶ娘に「ありがとう」と伝えた。(金 慶順)