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「タイムよりも走ることが大事」。本番に向け練習する多田豊さん=神戸市東灘区向洋町中、神戸市立六甲アイランド高校
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「タイムよりも走ることが大事」。本番に向け練習する多田豊さん=神戸市東灘区向洋町中、神戸市立六甲アイランド高校

「タイムよりも走ることが大事」。本番に向け練習する多田豊さん=神戸市東灘区向洋町中、神戸市立六甲アイランド高校

「タイムよりも走ることが大事」。本番に向け練習する多田豊さん=神戸市東灘区向洋町中、神戸市立六甲アイランド高校

 19日開催の「第7回神戸マラソン」(神戸新聞社など共催)まで1週間となった。2万人のランナーが、それぞれの思いを胸に本番を迎える。神戸市北区の高校教師多田豊さん(58)は、がんと向き合いながら8度目のフルマラソンに挑む。「家族や友人に走ることで感謝を表現したい。それがモチベーション(動機)」。元気であることを伝えるつもりだ。(坂山真里緒)

 中学、高校、大学と10年間、陸上部に所属。30年のブランクを経て、5年前からフルマラソンに挑戦している。2015年の福知山マラソン(京都)で自己ベスト3時間25分50秒を記録するなど、充実した市民ランナー生活を送っていた。

 違和感を持ったのは昨年2月。首の左側のリンパ節が腫れていた。診断された病名は「上咽頭がん」。同5月に入院し、放射線治療と抗がん剤治療の毎日が2カ月続いた。「がんの痛みはなかったが、副作用の吐き気や倦怠(けんたい)感がしんどくて何度も諦めようと思った」

 家族や同僚、ランニング仲間からのエールが力になった。入院中に「第6回神戸マラソン」当選の連絡が来た。マラソンに出場し、元気な姿を見せることを励みに治療を乗り越えた。

 ほぼぶっつけ本番で挑んだ第6回大会。5時間55分かかったが、ゴールした時の喜びは今まで味わったことのないものだった。

 幸い、上咽頭がんは消えた。「さあ今年こそ」。そんな思いだった今年3月、肺への転移が分かった。右肺の3分の1を切除したが、6月にはさらに複数のがんの芽が両肺に見つかった。徐々に大きくなり、現在は7ミリ程度。別の箇所を刺激しないよう、治療せずに経過観察を続けている。

 昨年よりもショックは大きかった。「この先、安心できることはない。それががんと付き合っていくということ」。だからこそ普段通りを心がける。走ることもその一つ。練習中にきれいな夕焼けを見た。今日は走っていて風が気持ち良かった。「走ることはしんどい以外の何物でもない。でも、瞬間、瞬間の充実感が忘れられない」

 神戸市立六甲アイランド高校(同市東灘区)で日本史を教える。生徒に伝えている言葉「命さえあれば何とかなる」は、自分へのエールでもある。家族や仲間の待つゴールを目指し、スタートラインに立つ。

2017/11/12
 

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