長田マンスリー
神戸市長田区の地図を開いてみた。まず目に止まったのが、須磨区との区境にそびえる「高取山」だ。六甲山全山縦走のコースとして知られ、毎日登山の草分け的存在とも聞く。「本当に毎日登るの?」。沖縄出身の私には耳を疑うような話だが、5千回、1万回は珍しくないらしい。中には2万回超えの人もいるとか。2万回登るには1日1回として54年もかかる。「すごすぎる!」。長田を知るには、まずこの山を制するべし。好天に恵まれた10月中旬、山好きの地元住民らに案内してもらい、頂上を目指した。(久保田麻依子)
山頂へ向かうには九つほどのルートがあるという。今回は育英高校(長田区長尾町2)近くに入り口がある「一宮コース」からスタートした。住宅が連なる坂を進み、緑深まる登山道へ。コンクリート舗装のため歩きやすく、地元の幼稚園児や主婦も気軽に楽しめるという。1日1回、数カ所に設置された名簿に記帳ができる。
登山者のピークは、午前6時ごろ。登山道脇の広場で開催されるラジオ体操が目的という。保護司の工藤一幸さん(69)は「雨でも雪でも、真っ暗な時間帯から元気に登る人も多い。通勤前にひと登り、という人もいる」と教えてくれた。すれ違う人とあいさつするのも、山のマナーだ。
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ところで「高取山」の読み方は、「たかとりやま?」「たかとりさん?」 正式には「たかとりやま」と呼ぶが、国土地理院に登録された麓の地名は「高取山(さん)町」という。
その影響からか、平和台町2丁目西山自治会会長の酒井譲二さん(71)、妻悠子さん(67)は「地元の人たちはほとんどが『たかとりさん』と呼びます」。長田区役所によると「親しみを込めて『○○さん』と呼ぶ関西特有のルールが、高取山にも適用されているのでは」と説明する。
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ゆっくり歩いて約40分。澄んだ空気に、木漏れ日が気持ちいい。秋が深まるにつれ、イチョウや紅葉が色づくのも、常連さんにとっては待ち遠しいのだろう。
大鳥居をくぐって最後の階段を上ると、山頂の高取神社に到着した。標高は328・8メートル。神戸や大阪を見渡せる眺望に、疲れが吹き飛ぶ。
宮司の岡本延清さん(59)によると、同神社は1800年以上の歴史を持ち、古くは「神撫山」とも呼ばれていた。明治後期ごろに「毎日登山」の文化が生まれ、年代を問わず親しまれている。拝殿には心温まる「あるもの」が…。
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景色と歴史を楽しみ、いざ山を下る。高取山の大きな特徴は、登山ルートに四つのお茶屋さんがあること。毎日登山の常連さんの多くは、ラジオ体操後、お茶屋さんに立ち寄り、おしゃべりしたり、コーヒーを飲んだりするのが日課という。お腹が空いてきたので、中腹にある「中の茶屋」で休憩した。
オーナーの上原廣美さん(71)、律子さん(67)夫婦は、元々は山の常連。先代夫婦が高齢化で店を引退すると聞いて引き継いでから、来年で丸10年を迎える。近年は海外からの登山客も増え、外国語で書かれた色紙が店内に飾られている。
日曜はカラオケや卓球大会でにぎわうほか、地元企業が催す「投げ輪」の競技場にもなるという。律子さんは「山好きな人は健康ではつらつ。毎日登って、ここで一杯引っかけて、ひと息ついて下る。年配の登山者も多いから、私たちも『若造』のうちに入るんですよ」とにこやかに語った。
帰りは旧参道を通り、住宅街に到着した。もうひと往復…とはいかないが、初心者でも毎日登山は続けられそうだ。
長田区をどっしり見下ろす高取山は、まさに区民のオアシスだった。
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