医療保険について悩む女性※画像はイメージです(maru54/stock.adobe.com/)
医療保険について悩む女性※画像はイメージです(maru54/stock.adobe.com/)

都内のメーカーで事務職として働く52歳の女性は、子どもが独立して生活に少し余裕が出てきたこのタイミングで、ふと疑問を抱くようになりました。「20年近く続けてきた月2000円の医療保険、本当に今のままでいいのだろうか」と。

30代前半で結婚・出産を機に、夫婦で保険について真剣に考え、「子どもが小さいうちに自分が病気になったら…」という不安から最低限の保障を確保しようと選んだのが、入院1日あたり5000円、入院一時金5万円という内容の月額2000円の医療保険でした。当時は「もしものときの安心料」として、家計に負担の少ないこの保険料を妥当だと感じていました。

しかし、子どもが独立した今、あらためて保険証券を見直してみると、疑問が湧いてきます。「入院日数は年々短くなっているし、年間2万4000円も払っていて本当に必要なのかな」と。

…こうした悩みは、多くの同世代の女性にとって共通のテーマかもしれません。子育てが一段落し、家計の見直しを進めるなかで浮かび上がる「医療保険、今のままでいいのか」という問い。人生のステージが変わった今、20年前に選んだ「最低限の保障」が本当に自分に合っているのか、多くの人が見直すタイミングに差しかかっています。

■「もう医療保険は最低限でいいかな」子育てがひと段落した本音

家計を見直すきっかけになったのは、次男の大学卒業でした。これまで月平均6万円かかっていた教育費が不要になり、「これからはお金の使い方を見直したい」という気持ちが芽生えたのです。

浮いた教育費を、以前から興味のあった海外旅行や、老後に向けた資産形成(NISAなど)に充てたい--。そんな思いから、あわせて気になり始めたのが、長年なんとなく続けてきた医療保険でした。

「正直、入院した経験って20年間で一度もないんです。年間2万4000円の保険料を“安心代”と思って払い続けてきたけれど、今の自分に本当に必要な保障なのか、あらためて考えるようになりました」

■「最低限の保障」でカバーできる医療費はどのくらい?

まずは公的制度を確認してみましょう。日本には高額療養費制度があり、医療費の自己負担には上限が設けられています。

年収が360万円の場合、1カ月の自己負担上限は5万7600円(標準的な条件での計算)です。つまり、どんなに医療費が高額になっても、月々の負担はこの金額に抑えられます。

また、入院1日あたりの医療費の自己負担(3割負担)は約5000円が目安です。女性が加入している月2000円の医療保険では、入院給付金として日額5000円が一般的な保障内容です。

公的制度により多くの医療費は一定額に抑えられるため、月2000円の保険で得られる保障でも「短期間の入院」程度なら、ある程度カバーできる計算になります。

ただし、重篤な病気や長期入院の際には、この金額では不足してしまう可能性もあります。特に注意すべきは、高額療養費制度の対象外となる費用があることです。

食事代、差額ベッド代、先進医療にかかわる費用などは、すべて自己負担です。これらの費用は、入院が長期化するほど家計への負担が大きくなります。

■52歳女性が選んだ「ほどよい備え方」とは

女性が最終的に選んだのは、「貯蓄で対応できる範囲」と「保険で備えるべきリスク」を分けて考える方法でした。

「短期間の入院なら貯蓄で対応できそう。でも、がんのような重篤な病気は別に考えないといけない」として、現在の医療保険を見直し、がんや三大疾病に特化した保障への乗り換えを検討しています。

こうした特化型の保険のなかには、月1000円前後で必要な保障を確保できるものもあるため、年間の保険料は約1万円~2万円軽減されます。浮いたお金を老後資金の積み立てや、海外旅行の費用に充てることにしました。

女性の選択は、貯蓄と保険をバランス良く使い分け、重点的に備えるべきリスクには必要最小限の保障を確保する、とても合理的な考え方です。それ以外の部分は保険をスリム化し、浮いたお金を自分の将来に活かす柔軟な選択といえそうです。

50代は、医療保険を見直す絶好のタイミングです。子育て期に加入した保険が、今の生活スタイルや価値観に合っているか、一度じっくり検討してみてはいかがでしょうか。

【監修】財前裕(ざいぜん・ゆたか)1級ファイナンシャル・プランニング技能士 元銀行員・Webライター。銀行員時代には、個人の資産運用や住宅ローン、保険など多岐にわたる金融商品の提案を行い、顧客のライフプランに合わせた最適なアドバイスを提供してきた経験がある。現在FP1級を取得し、Webライターとして、お金に関する記事執筆を担当している。

(まいどなニュース/もくもくライターズ)