2024年にリニューアルオープンした料亭のような本店「美々卯 Megumi」©テレビ大阪
2024年にリニューアルオープンした料亭のような本店「美々卯 Megumi」©テレビ大阪

黄金の出汁に肉・魚介・野菜の旨みが染み出した珠玉の逸品、大阪名物『うどんすき』。その商標を持ち、発祥として名を馳せる「美々卯」は、年間15万食を提供し、「美々卯」=「うどんすき」と言っても過言ではありません。そんな「美々卯」に、女性だけが働く蕎麦の専門店があることをご存知ですか?100年の歴史を迎える老舗が、なぜ驚きのリニューアルを果たしたのか。その裏側に迫ります。

■美々卯の本店なのに“うどんすき”がない

「美々卯」の本店があるのは大阪市中央区。ビルが立ち並ぶ本町エリアに、まるで料亭のような建物が見えてきます。こちらが美々卯の本店で、2024年にリニューアルオープンした「美々卯 Megumi」です。

話を伺ったのは5代目社長の妻、女将の江口温子さん。本店は、なんと美々卯の看板商品である“うどん”の取り扱いはなく、蕎麦だけの専門店なんです。

そこで蕎麦を打つのは、女性の蕎麦職人。さらにスタッフも女性ばかりで、美々卯としては店舗初の試みだそうです。100年の歴史を持つ名店がなぜ蕎麦の専門店を、そしてなぜ女性だけのスタッフの店を作ったのでしょうか。

■かつてはあの文豪も通っていた!美々卯の始まりは蕎麦だった

その誕生は、美々卯5代目社長である江口公浩さんの悩みから始まりました。せっかく社長になったのだからと、自分なりの改革で会社を盛り上げることを考えます。

しかし、歴史をかけて作られた「うどんすき」はすでに味が完成されていて、変えるところがありません。出る幕がないと頭を抱えていたところ、ひとつの記憶が蘇ります。

それは公浩さんがまだ店舗の店長だった頃、来店した客に店のおすすめを聞かれ、実は蕎麦もおすすめだと伝えると「美々卯のくせに蕎麦なんかあんの?」と言われたことでした。それがずっと心に引っかかっていたのです。

1925年(大正14年)に創業した美々卯の始まりは、初代薩摩平太郎さんが、戎橋北詰に開いた“大衆蕎麦店”だと言われています。

今でこそ当たり前の、ざるそばにうずらの卵を付けることも、美々卯が発祥なのです。

文豪の谷崎潤一郎も、その蕎麦を目当てに足繁く通ったほどでした。しかし、“関西=うどん”というイメージのもと、美々卯もいつしか「うどんすき」が有名になり、蕎麦の存在は忘れられていったのです。

原点回帰を図り、「蕎麦を推していくこと」を思いついた公浩。何かもう一つインパクトが必要だとひらめいたのが、「女性職人のいる蕎麦の店」でした。以前から、女性のスタッフは結婚し子どもができると辞める人が多かったため、女性が働きやすい環境を整えたいという意向もありました。

新店舗のために抜擢したのが、現在美々卯本店の店長を務める島村紀子さんでした。

紀子さんは18歳で美々卯に入社。蕎麦打ちにハマり、わずか4年でたった5人しかいない蕎麦打ち認定1級を取得したほどの腕前。女性で唯一の手打ち蕎麦のエキスパートでしたが、妊娠出産に伴い退社。しかし、子どもが成長したためパートとして復帰していたのです。

公浩さんに店長になって欲しいと言われるも、子育てを優先したい紀子さん。

そこで公浩さんが明かしたのが、「ランチ営業しかしない」という驚きのプラン。「朝に仕込みをして営業時間は11時から15時まで、後片付けをしても夕方には帰ることができる」と説得します。

そしてもうひとつのプランは、スタッフ全員を女性にすること。「子育て中の人が家族も仕事も大事にできて、蕎麦打ちを極めたい女性社員が集まるお店を作りたい」という、公浩さんの熱い想いに紀子さんも可能性を感じ受け入れることに。こうして、子育て中のスタッフも含めた、美々卯きっての女性人材が集まった店が誕生したのです。

■店をオープンするも客は来ず…。予想外の厳しい状況にもぶつかり苦悩の日々!

2024年10月に本店を改装リニューアルオープンした「美々卯 Megumi」。しかし、オープン当初は全くというほどお客さんが来ず、お客さんが来ても、求められるものは蕎麦ではなくうどんでした。

さらに12月にインフルエンザが大流行。子どもを持つ従業員が出社できなくなり、オープン早々臨時休業を余儀なくされたのです。1年の中でも稼ぎ時であったため店長も女将も落ち込んだものの、日々前に進むしかないという厳しい状況でした。

■つらい日々から半年、女性ならではの○○をコンセプトにした蕎麦が人気に!

つらい日々から半年が経ち、徐々に多くのお客さんが来店するように。女性従業員ならではの雰囲気が好評で、週1回来るという常連客もいるほどになりました。

中でも人気のメニューは、女性の感性が光った一品なんだとか。

そのお蕎麦とは…季節ごとの香りをテーマにした「香り蕎麦」。

春は「桜の香りそば」を提供。桜の塩漬けを麺に練り込んだ蕎麦に、桜の香りを引き立たせるめんつゆ、さくらじお、さらに薬味に桜の葉の塩漬けと、春の香りを満喫できるメニューです。それは、店長である紀子さん粘り強さや根気により実現したもの。これまでにも、2ヶ月ごとに黒胡麻やゆずなどの香り蕎麦シリーズを開発し、季節限定商品でリピーターを獲得しているのです。

さらにはこの店だけの「そばしゃぶ」も登場。「うどんすき」よりもサクッと食べて帰れるお鍋です。

こうして、一味違うメニューを打ち出し、「美々卯」の蕎麦専門店として受け入れられる様になりました。男性社員のパワーももちろん必要ですが、女性がいてこその新しい視点を活かした「美々卯 Megumi」は、「美々卯」にも新しい視点をもたらすのではないかと温子さんは語ります。

女性の感性と経験を活かした新しい蕎麦店「美々卯 Megumi」は、単なる飲食店にとどまらず、働き方や生き方にまで光を当てる存在となっています。「美々卯 Megumi」の挑戦は、これからも多くの人の心を動かしていきそうです。

■番組情報

〇番組名
日経スペシャル もしものマネー道もしマネ
〇内容
『もしもの時』に備えるマネー道!マネー活用バラエティ!
〇放送日時
テレビ大阪 第1~3日曜日 午後2時放送!放送終了後はYouTubeチャンネル、TVerで無料見逃し配信中。

(まいどなニュース/クラブTVO編集部)