世界最大規模の世論調査会社イプソスが公開した「イプソス世代レポート2025」で、国や地域によってX世代の歩んだ道が大きく異なっている実態が浮き彫りになりました。日本では、1970年代後半から1980年代前半に生まれた「就職氷河期世代」が正社員になれないままキャリア形成の機会を失った一方、同じ時期に生まれたアメリカの人々は、現在もっとも高収入の世代としてビジネスの中核を担っているそうです。
■“X世代”、日本とアメリカでここまで違う
日本の就職氷河期世代は、1990年代のバブル崩壊にともなう長期不況と新卒採用の抑制の影響を強く受け、「正社員になれなかった世代」として語られます。イプソスはこの層を、国際的な分類でいうX世代(1960年代後半~1970年代生まれ)に含まれるものとして位置づけています。
アメリカのX世代では、大学進学率が初めて50%を超え、女性の教育水準が男性を上回るなど、高学歴化が進んだことが特徴です。現在、アメリカではX世代がもっとも高収入の世代となっており、ベビーブーマーやミレニアル世代を上回っています。さらに、フォーチュン500企業のCEOの平均年齢もX世代にあたる59歳で、ビジネスリーダーの主流を占めていることも示されました。
■軍事政権と経済危機の中で青春期を過ごした地域も
X世代の若年期は、地域によって大きく異なります。ラテンアメリカでは、軍事政権や経済危機の中で青春期を送りました。1980年代は「失われた10年」とも呼ばれ、外債の返済不能や巨額の財政赤字、ハイパーインフレなど、混乱した経済状況が社会を覆っていました。
イプソスのPublic Affairs Global CEO、ダレル・ブリッカー氏は、X世代について次のように語っています。
「皮肉なことに、かつて『怠け者』と見なされていた世代が、現代におけるワーカホリック(仕事中毒者)となりました。彼らには、そうならざるを得ない事情があったのです。ベビーブーマー世代ほどの恩恵もなく、ミレニアル世代ほどの支援もなかったX世代は、自分自身に頼る術を身につけました。彼らは、中流階級の夢が変わってしまったこと、そして誰も成功を与えてはくれないという現実を、最初に受け入れなければならなかった世代なのです」
■Z世代、YOLD…そのほかの世代像も浮き彫りに
今回のレポートでは、X世代に限らず、ほかの世代についての分析も行われています。
Z世代は一枚岩ではなく、男性は伝統や保守的な価値観に傾倒する一方、女性はより進歩的でリベラルな考え方を支持する傾向です。SNSの普及によるフィルターバブルの影響から、男女で価値観の分断が起きていると考えられます。
また、X世代のより上の世代はYOLD(Young Old)とも呼ばれ、インターネットなどのテクノロジーに親しみ、社会との関わりや消費意欲も衰えていません。また、社会問題に対して進歩的な考え方を持つ場合もあり、「高齢者=保守的」といったステレオタイプのイメージでは語れない世代です。
■静かに影響力を増す自活を余儀なくされたX世代
社会の中核を担うライフステージとなり、静かに影響力を持ち始めているのがX世代です。人口規模が大きく、消費の動向に影響を与える存在として無視できません。
X世代の中には、いわゆるワーカホリックと呼ばれる人も少なくありません。ただし、彼らがそのような生き方を選ばざるを得なかった背景には理由があります。上の世代のように経済成長による恩恵も、下の世代ほどの社会的支援も受けられず、多くの人が自活を余儀なくされたからです。
調査を実施したイプソスは、X世代について「中流階級の夢が変わってしまったこと、そして誰も成功を与えてはくれないという現実を、最初に受け入れなければならなかった世代ではないか」と述べています。
【出典】
イプソス株式会社/<イプソス世代レポート2025>