Osaka Metro中央線の終着駅である夢洲駅は、大阪・関西万博東ゲートの最寄駅です。万博に訪れる約7割がOsaka Metro中央線を使うとあって、夢洲駅はいつも混雑しています。
ところで、夢洲駅にある運賃表を見ると、隣駅のコスモスクエア駅まで330円を要します。Osaka Metroの初乗りは190円です。なぜ、コスモスクエア~夢洲間の運賃は330円もするのでしょうか。
■Osaka Metroの運賃の仕組み
コスモスクエア~夢洲間の運賃を見る前に、Osaka Metroの運賃の仕組みを解説します。Osaka Metroの運賃は区間制です。初乗り(3キロ以下)は190円、2区(3キロ超~7キロ以下)は240円、3区(7キロ超~13キロ以下)は290円、4区(13キロ超~19キロ以下)は340円です。
コスモスクエア~夢洲間は3.2キロですから、本来なら240円です。しかし、実際の運賃は90円も高い330円となっています。
■加算運賃の背景は?
コスモスクエア~夢洲間の運賃330円の背景には、同区間における設備投資や線路使用料が挙げられます。コスモスクエア~夢洲間の総事業費は1000億円を超えます。
このうち、土木構造物・エレベーター・エスカレーターなどのインフラ部のコストは大阪市(大阪港湾局)が持ちます。
一方、軌道・駅舎の建築仕上げ・電力施設・車両などのインフラ外部のコストはOTS(大阪港トランスポートシステム)とOsaka Metroが持ちます。
OTSは大阪市が出資する第三セクター鉄道事業者で、Osaka Metro中央線・大阪港~夢洲間、ニュートラム・コスモスクエア~トレードセンター前間の鉄道施設を保有しています。ただし、OTSは車両を持たず、自社では運行しません。
大阪港~コスモスクエア間、コスモスクエア~トレードセンター前間は、OTSが鉄道施設を保有する第三種鉄道事業者、Osaka Metroが運行を担当する第二種鉄道事業者となっています。
2000年、OTSは路線を保有し、自社で運行する第一種鉄道事業者として、コスモスクエア~夢洲~舞洲~新桜島間の事業許可を取得しました。2023年、Osaka MetroとOTSとの間で鉄道施設使用協定書を締結。Osaka Metroは第二種鉄道事業者として、参画することになりました。
コスモスクエア~夢洲間において、OTSは第一種鉄道事業者ですが、自社車両は持たず、運行は行いません。線路などのインフラ外施設を保有・管理する存在です。
Osaka MetroはOTSに線路使用料を払った上で、第二種鉄道事業者として、運行を担当しています。
なお、OTSが事業許可を取得している夢洲~新桜島間については、2025年8月現在、着工には至っていません。
■加算運賃は受益者負担
コスモスクエア~夢洲間の単独事業で考えた場合、普通運賃のみでは、Osaka Metroが受け持つ設備投資のコスト、OTSに支払う鉄道使用料を賄うことが難しい状況です。そのため、受益者負担の観点から、「加算運賃が必要」という判断に至りました。
また、Osaka MetroとOTSが保有する施設の減価償却期間は20年前後です。20年で累積損益を黒字化するという計画に基づき、「90円」という額が決まりました。
なお、Osaka Metroが販売する1日乗車券「エンジョイエコカード」は、コスモスクエア~夢洲間では利用できません。
(まいどなニュース特約・新田 浩之)