砂浜で遭遇したのは…/投稿主さん提供
砂浜で遭遇したのは…/投稿主さん提供

沖縄・やんばるの海辺で、釣り糸に絡まって動けなくなっていたウツボを助ける様子がInstagramに投稿され、注目を集めています。投稿したのは、ネイチャーガイドのきゃんあやかさん(@yambaru_nature_guide)。釣り糸をほどいて海へ戻してあげると、ウツボが自ら沖へ向かって泳ぎ出し、その姿に「自分で泳いだぁぁ!!」と喜びをにじませました。この投稿には、「優しいあなたにウツボの恩返し以上のいいことが降り注ぎますように」「お姉さん、勇気あるなぁ」など、称賛の声が寄せられています。

この日、きゃんさんはいつものように仕事前に自宅近くの海へと向かい、散歩がてら砂浜を歩いていたといいます。

 「流木のようなものが落ちているのが目に入り、近づいてみたら釣り針と釣り糸が絡まったウツボでした。糸を少し持ち上げるとわずかに反応があり、“まだ生きている”と気づいたんです。今すぐ海へ戻せば助かるかもしれないと思い、救護を試みました」

砂浜で目にしたのは、釣り針が刺さったまま砂地に放置されていたウツボ。きゃんさんは「怒りというよりも悲しさの方が大きかった」と振り返ります。

 「なぜこんなことが起きてしまったのだろうと思いました。釣りをするなら最後まで責任を持ってほしい、そんな気持ちでした」

ウツボは鋭い歯を持ち、一般的には“危険生物”とされます。きゃんさんは自身の投稿でも「素手で触らないで」と注意喚起していました。

 「怖さはありましたが、躊躇はありませんでした。かなり弱っていたので、“今助けないと本当に助からない”と感じたんです。噛まれるかもしれないという恐怖よりも、助けたいという気持ちの方が勝ちました」

動画では、ハサミのような道具を使って糸を切る様子が映っています。

 「たまたま一緒に散歩していた恋人が、仕事で使う予定だった剪定バサミを車に積んでいたんです。それを使い、ウツボを傷つけないよう慎重に糸を取り除きました。かなり弱っていて抵抗もせず、おとなしくしていました」

やがて糸を外し、浅瀬に放つと、ウツボは自力で海へ泳ぎだしました。ウツボが自分で泳げることを確認すると、今度は大海原へと向けてウツボを放してあげることに-。

 「ぐったりしていたのに、泳ぎ出した瞬間は心の底からホッとしました。“まだ野生で生きていけるかもしれない”と希望が持てた、感動的な瞬間でした」

ネイチャーガイドとして活動するきゃんさんは、日頃からやんばるの森を案内する仕事をしています。自然の中では、命のはかなさに直面する場面も少なくないとか。

 「海だけでなく、森の中でも野生動物の“ロードキル”に多く遭遇します。ヤンバルクイナやケナガネズミなどの希少種をはじめ、両生類や爬虫類が車と接触して命を落とすことが毎日のようにあるんです。そうした現実もガイドツアーの中で伝えるようにしています」

今回の投稿には、さまざまな反応が届いたそうです。

 「『釣ったら責任を持って逃すか食べるべき』『酷いことをする人もいるね』などの意見をもらいました。中には、『ウツボは美味しいのに、なんで逃した~!』とお叱りもありました(笑)。ただ、同時に『直接触るのは危ないよ』と心配してくださる方も多く、本当にその通りだと思います」

仕事を通じて自然界における命の重さを知るきゃんさんは、今回の救助をきっかけに、自然と人との関わり方を改めて感じたといいます。

 「ほんの小さな行動でも、助けられる命があるということを多くの人に知ってほしいです。そして、海も森も“人間のもの”ではなく、共に生きる場所だという意識を持ってもらえたらうれしいです」