元セクシー女優のフリーライター・たかなし亜妖
元セクシー女優のフリーライター・たかなし亜妖

大人のお店に勤めるキャストの漠然としたイメージの中に「ホスト狂い」があり、みんな夜遊びのために働いていると勘違いされがちです。しかしキャストの事情を探るとお金が必要な理由はさまざまで、必ずしも収入が遊び代へ直結するとも限りません。

ただ、「誰かへの応援資金」のために夜職をする女性が溢れんばかりに存在するのは、紛れもない事実。近頃はオタ活(オタク活動)を理由に風俗デビューするケースが増え、声優の追っかけ、アニメグッズ&イベント全コンプリート、ソシャゲ重課金ユーザーの風俗キャストなんて例もかなり多いのです。

そんな“オタク風俗嬢”たちの勢いは、思わず圧倒されてしまうレベル。ホス狂いと気合の入り方がほぼ変わらないどころか、下手すると飲み屋を練り歩く人々よりもスゴいかもしれません。

■オタ活にはお金が要る!自称“喪女”が夜職の扉を叩いたきっかけ

ホストのような接客業と違い、アニメキャラや漫画、配信などは多額のお金を遣わずとも楽しめるコンテンツです。軽めに応援するライトユーザーも多く、彼らは推しに対する執着心が薄いもの。本記事のために取材をしたユナさん(仮名・25歳)も当初は熱量の高くない一般的なファンでした(以下『』内、ユナさん談)。

『漫画やアニメは好きだったけど、グッズをたまに買う程度でした。ぬるくオタ活をしていたところ、とあるソシャゲに出会いまして。激ハマりし、“課金”を覚えたのです。これが私にとって地獄の始まり(笑)』

一度の課金により「お金を使うともっと楽しい」ことに気づいた彼女。次第に金額が大きくなり、次々と多数のコンテンツに興味が移った結果“ガチオタ”へ大変身!推し作品への愛が深まるとグッズやイベントを全制覇したい気持ちが芽生え、現在の収入では足りない現実に直面しました。

当時の彼女は、まだ大学生。アルバイトをいくつも掛け持ちし、授業に出席する多忙な日々を送っていたので短時間で効率よく稼げる仕事を考え始めます。お金に困っていなさそうなオタク仲間に相談したところ、勧められたのがまさかの風俗業でした。

『コスプレをしているすごい可愛い友達がいて。本業が風俗だというヒミツをこっそり教えてもらい、“働く?”と誘われたんです。ぶっちゃけると、レイヤー(コスプレイヤーの略)ってコスのために整形したいなどの理由で、夜職をする人がすごく多いですよ。だからその子が風俗してるの聞いても、さほど驚かなかったな。

でも、私は今まで1人のオトコとしか付き合った経験しかないオタクの“喪女”(モテない女性のこと)。当時はメイクも汚く見た目にも気を遣ってなくて、そんな仕事できるか不安だったけど……覚悟を決めたらできたし、思いのほか稼げちゃったんですよね(笑)』

素朴で擦れていない雰囲気がお客さんにウケたのか、入店してすぐに人気が出たユナさん。大学が終わった後にお店へ向かう日々を過ごし、毎回5時間勤務で3~5万円は確実に持ち帰りました。

勤務中は、オタクなことを隠しません。むしろ趣味を公開することにより「オタクなお客さんからの指名が入りやすくなり、リピーターを作りやすいです」とのことです。

■枯れるまでガチャガチャを回すのが「気持ちいい」

その後のユナさんは、大学卒業後に一般企業へ就職し、夜職との掛け持ちを続けていました。しかしWワークをした上でのオタ活はとにかく時間が足りません。例えば「推しの配信を絶対にリアルタイムで視聴したい」や「イベントは全通したい」、「グッズは片っ端から回収したい」など、欲望が満ち溢れています。

そして生活を推し一色にすることを決めたユナさんは、思い切って会社を退職。大学時代から続けていたお店一本に絞り、現在もオタ活に合わせたスケジュールでシフトを提出しているとか。

平均収入は月収100万円前後。彼女は実家住まいなので家賃がなく、毎月家に入れるお金は3万円です。彼女は「給料のほとんどを趣味に突っ込める」らしく、最近のブームは推し作品のガチャを片っ端から回すこと。商品がなくなるまで自分1人で回すことが、何よりも気持ちいいと語ります。

『収集癖ですよね、完全に。コンプリートボックスとかも買いますけど、集めたことに意義を見出す的な感じ。ガチャも回しきって、出たアイテムを持ち帰り、開けずにそのまま部屋に転がってるとかあるあるだもん(笑)』

よく熱量の高いオタクは“推しを応援している事実を楽しんでいる”なんて言われますが、ユナさんの場合はまさにその典型例なのでしょう。趣味の話をする彼女はとても楽しそうで、そこに悲壮感はまるでありませんでした。

この手の人々には「将来どうするんだ」と非難の声が上がるけれど、オタク女子はとにかく行動力がスゴイので、「なんだかんだどうにかなるタイプだろうな」と勝手に思ってしまいます。

彼女たちは俗に言う“一般的な道”からは外れているものの、それが1人の人間の幸せになっていれば悪いことではないのでしょう。ノリと勢いで前に突き進むのも、また人生。今はこんなナイトワーカーも実際に多いため、夜職=借金や飲み代だけではなくなったのを見ていると時代の変化をつくづく感じますね。

◆たかなし亜妖(たかなし・あや)
元セクシー女優のシナリオライター・フリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ゲーム会社のシナリオ担当をしながらライターとしての修業を積み、のちに独立。現在は企画系ライターとしてあらゆるメディアで活躍中。