ある夜、会社員のAさんは最寄駅から家までの帰り道に、学生証を拾いました。学生証を見ると、近所にある大学に通う学生のもののようです。Aさんはすぐに持ち主に返したいところですが、夜も遅いため、その日はとりあえず家に持ち帰ることにしました。この大学はAさんの自宅から歩いて15分ほどと近くですが、仕事もあるため、通勤途中に届けに行く余裕がありませんでした。
また交番は歩いて30分ほどの距離にあり、こちらも届けに行くことが難しい状況です。困ったAさんは落とし物を拾ったときにどうすればいいかを調べてみると、警察のホームページには「本人に返還するもしくは交番に届け出る」と書いてありました。
交番に行くことが難しいAさんは、ひとまず大学に連絡を入れると「着払いで送ってほしい」と返答があったため、着払いで送りました。今回は学生証だったため何事もなく終わりましたが、財布など物によっては「お金が盗られたのでは?」と怪しまれそうだなとAさんは思いました。しかし連絡先が分かるのであれば、やはり本人に返すべきなのでしょうか。千葉県で警察官として20年以上勤め、現在はサービス業を起業して活動している笹岡健司(仮名)さんに話を聞きました。
■財布は警察に届け出た方が安全
ー本人に落とし物を返せる手段があるのであれば、直接返したほうがいいのでしょうか?
お調べいただいたように、「拾得者は、速やかに、拾得をした物件を遺失者に返還し、又は警察署長に提出しなければならない」(遺失物法第四条)と定められています。具体的に距離や時間にしてどれくらいの範囲であればご自身で返した方が良いのか、という特別な定めはありませんが、無理のない範囲であればご自身で返しても問題ないでしょう。
ー本人に返すのではなく、警察に届け出たほうがいいものはありますか?
同じく遺失物法第四条では、「所持が禁止されている物に該当する物件及び犯罪の犯人が占有していたと認められる物件は、速やかに、これを警察署長に提出しなければならない」とあります。たとえば、刃物や覚せい剤など所持が禁止されているものを拾われた場合には、警察に持って行くというよりも警察に通報しましょう。
また、事例にある財布の落とし物についてです。警察に届けられる財布は、現金のみが抜き取られている状態のものが多くあり、拾われた財布は窃盗などの何かしらの「遺留品」であることも考えられるでしょう。
犯罪に関わっているかもしれない財布であることや、「現金がなくなっている」などの理由から無用なトラブルを引き起こす可能性もありますので、お金に関わるものは警察に届けていただいた方が安全と考えます。
ーそのほか、落とし物に関して気をつけた方がいいことはありますか?
遺失物法では、拾得から7日以内に警察へ届け出ること、管理者のいる場所では24時間以内に施設占有者に届け出ることが定められています。定められた期限やルールを守り、怪しいものは警察に届け出ることが無用なトラブルを避ける近道です。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)
























