近所のゴミ屋敷への対策どうしたらいい? ※画像はイメージです(beauty-box/photoAC)
近所のゴミ屋敷への対策どうしたらいい? ※画像はイメージです(beauty-box/photoAC)

静かな住宅街に暮らす専業主婦のBさん(40代)は、数カ月前から隣の家の異変が気になっていました。玄関先に置かれた多くのゴミ袋です。最初は「ゴミ出しを忘れているのかな」という程度でしたが、ゴミ袋は徐々に増え、夏には強い悪臭が漂うようになりましたす。

風が強い日にはゴミが敷地に飛んできて、庭にはハエが大量発生。問題は悪臭だけではなく、Bさんの小学生の娘がアレルギー体質のため、健康への影響も心配です。注意して片付けてほしいものの、「直接言ったら逆恨みされそう」という恐怖心から、Bさんは誰にも相談できずにいました。

同じような悩みを抱えているのが自分だけではないと分かったのは、町内会の清掃日で近隣の住人と話した時でした。どうやら他の住人もBさんと同様に直接注意できずにいました。行政に通報しても身元がバレたらどうしようという不安が消えません。

このように日常生活に支障が出ているゴミ屋敷問題について、住民はどこまで対応しどこから行政や法律の力を借りるべきなのでしょうか。弁護士法人ユア・エースの正木絢生代表弁護士に話を聞きました。

■近隣住民によるごみ屋敷への対応とは?

ー近所がごみ屋敷になっている場合、住民が本人に直接注意しても問題ないのでしょうか?

「迷惑を受けている事実」と「生活への影響」を冷静に伝える限り、近隣住民が直接注意する行為は、通常は違法にはなりません。ただし、「こんな汚い家は近所の恥だ」「出て行け」といった人格攻撃が公然とおこなわれれば、名誉毀損・侮辱にあたり得ますし、「片付けなければ嫌がらせしてやる」などの発言は脅迫・強要と評価されかねません。何度も押しかけて長時間居座る行為も危険です。

相手の立場によっては感情的な対立に発展しやすいため、「事実を短く」「感情は抑える」「一対一で粘らない」という三点を意識し、可能なら町内会長や管理会社など第三者を同席させると安全です。

ー通報したら「誰が通報したか」相手に伝わりますか?行政への相談は、匿名でできますか?

役所への相談・通報で、通報者の氏名をごみ屋敷の住民に伝える義務は行政にはなく、実務上も本人の同意なく開示することは通常ありません。そのため、「役所が積極的に身元を教える」という心配は、基本的にしなくて大丈夫です。また、多くの自治体では匿名での情報提供や相談も受け付けており、「名前は伏せたまま状況だけ伝える」ことも可能です。

ただ、たとえば「ベランダのごみで困っている隣家」など、地理的に通報者がほぼ特定できるケースでは、ごみ屋敷の住民側が「きっとあの家だ」と推測する余地は残ります。ですので最初は匿名で相談し、行政の対応方針を聞いたうえで「氏名は伝えるが相手には絶対に出さないでほしい」と依頼するなど、段階的な関わり方を選ぶのが現実的です。

ー通報や相談をしても改善されないとき、近隣住民はどんな手段を取ることができますか?

行政へ通報しても改善しない場合、大事なのは「一度で終わらせず、継続的に状況を伝えること」です。多くの自治体条例は、指導→勧告→命令→行政代執行という段階を予定しています。しかし、近隣住民側から悪臭・害虫・火災リスクなどの具体的な情報が届かなければ、なかなか次のステップに進めません。

マンションであれば、管理組合・管理会社が管理規約を根拠に是正を求める役割を担いますし、それ以外の家屋の賃貸なら大家から「契約上の義務違反」として改善を求めてもらうことも可能です。

それでも、被害が受忍限度を明らかに超え、健康被害なども出ている場合には、写真・記録・診断書などの証拠を集めたうえで、弁護士を通じて差止請求や損害賠償請求を検討することになります。ただ、訴訟は時間・費用・関係悪化の負担が大きいため、最終手段と考えるのが現実的です。

ーもし注意や通報をきっかけにトラブルが起きた場合、被害を受けた住民はどこに相談すべきですか?

注意や通報をきっかけに「お前が通報したのか」と怒鳴られる、何度も玄関に押しかけられる、ポストに嫌がらせのメモを入れられる、といったトラブルに発展することもあります。

命や身体に対する不安を覚えるような言動があれば、ためらわず警察に相談すべきです。緊急なら110番、それ以外でも最寄りの警察署・交番で事情を説明し、記録化してもらいましょう。

暴言やつきまといも内容や頻度によっては、脅迫罪や迷惑防止条例違反などにあたり得るため、「犯罪かどうか分からないから」と遠慮する必要はありません。あわせて、自治体の生活相談・人権相談、法テラスや弁護士会の法律相談も活用できます。

その際、日時・場所・発言内容のメモや録音、防犯カメラ画像、壊された物の写真などの証拠を残しておくと、警察・弁護士いずれにとっても判断しやすくなります。

◆弁護士法人ユア・エース 正木絢生(まさき・けんしょう)代表弁護士
弁護士法人ユア・エース代表。第二東京弁護士会所属。消費者トラブルや交通事故・相続・労働問題・詐欺事件・薬物事件など民事事件から刑事事件まで幅広く手掛ける。BAYFM『ゆっきーのCan Can do it!』にレギュラー出演するほか、ニュース・情報番組などメディア出演も多数。YouTubeの「マサッキー弁護士チャンネル」にて、法律やお金のことをわかりやすく解説、ユア・エース公式チャンネル「ちょっと気になる法律相談」では知っておきたい法律知識を配信中。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)