再整備したウオーターフロントの京橋地区のイメージ(神戸市提供)
再整備したウオーターフロントの京橋地区のイメージ(神戸市提供)

 神戸市が、再整備を計画している臨海部のウオーターフロント(同市中央区)について、2026年度にも京橋地区の埋め立て事業に着手する方針であることが分かった。都心部から徒歩圏の水域に、新たに約3・2ヘクタールの土地を創出。来訪者が憩える緑地を整備し、にぎわいを生む拠点施設を設ける構想を描く。自然豊かな海が近いという神戸の特長を生かし、多くの人が訪れる新たな名所をつくる。(斉藤正志)

10年計画、にぎわい期待

 市によると、埋め立てるのは、メリケンパークと新港第1突堤の間の京橋地区で、現在は船だまりとして使われている水域。同地区は旧居留地の南に位置し、市はウオーターフロントの玄関口と位置付ける。

 埋め立て後は開放的な緑地を設けるとともに、南側の水際に遊歩道を、北側に旧居留地とつながる歩行者デッキを設置。現在、新港第1突堤側とメリケンパークを往来するためには、北側の神戸第2地方合同庁舎近くまで迂回(うかい)する必要がある。遊歩道や歩行者デッキを通ってスムーズに行き来できるようにすることで、一帯を回遊しやすくする。

 また新たに設ける拠点施設は、飲食や物販のほか、音楽やスポーツを楽しめる場所など、さまざまな可能性を模索。民間事業者に施設の整備、運営を委ね、収益を維持管理に充ててもらう方式の導入も検討する。

 市は25年10月、国土交通省に公有水面の埋め立てを申請し、認可を受けた。

 メリケンパーク南東端に24年度から新たな防波堤を造っており、25年度中に完成予定。26年度にも埋め立て用の護岸整備に向けた作業を始めたいという。

 現在の船だまりを利用している船舶は、埋め立て地南側とポートアイランド北側に新たに設ける船だまりに移す。

 埋め立て予定地には阪神高速神戸線の高架道路が通っている。阪神高速道路は、市による埋め立て事業に合わせて、この部分の高架道路の大規模改修工事を計画。市は、阪神高速の工事終了後に緑地などの整備に入るため、完成までには少なくとも10年程度かかるという。

 埋め立ての事業費は約50億円を見込み、船だまりの移転費用を含め、阪神高速道路にも一部負担してもらう方向で調整している。

 市ウォーターフロント再開発推進課の担当者は「人口減少社会の中でも、大勢の人に神戸を訪れてもらい、交流人口を増やしたい。そのために、海が近いという神戸ならではの魅力をさらに磨きたい」と話す。

 ウオーターフロントでは近年、新たな施設が次々と開業し、臨海部の景色を一変させている。

 21年に劇場型水族館「アトア」の入る複合施設「神戸ポートミュージアム」が開業し、24年に神戸ポートタワーがリニューアル。25年4月に約1万人を収容できる「ジーライオンアリーナ神戸」がオープンした。

 新港第1突堤と第2突堤の間の水域には「スーパーヨット」と呼ばれる大型クルーザーに特化したマリーナを整備中で、27年春ごろに開業予定。市は、都心部やウオーターフロント一帯を移動できる次世代型路面電車(LRT)などの導入の可能性も模索している。