身に覚えのないアダルトコンテンツの購入通知が
身に覚えのないアダルトコンテンツの購入通知が

埼玉県在住のEさん(40代)のもとに、ある日届いた1通のメール。そこに記されていたのは、身に覚えのない電子書籍の購入通知でした。金額は58円。しかし、それは家庭内に潜む「盲点」を露わにする出来事の始まりでした。小学校5年生の娘が「アダルトマンガ」を購入していたのです。

■届いた購入通知に驚き

最初は迷惑メールかと思ったというEさん。しかし確認してみると、決済は確かに自分のアカウントから行われたものでした。Eさん自身も使っていたマンガアプリでしたが、購入されたタイトルは明らかにアダルト作品。金額にも内容にも心当たりがなく、不正利用を疑ってパスワードをすぐに変更しました。

ところが、決済履歴をたどるうちに、思いもよらない事実が明らかになります。購入したのは、なんと小学5年生の娘だったのです。

■古いスマホに残っていた「親のアカウント情報」

娘が使っていたのは、かつてEさんが使っていた古いスマートフォン。インターネットを見たいというので渡していたもので、Eさんも利用状況は把握しているつもりでした。特に危険な使い方はしていないと思っていたといいます。

しかし娘はそのスマホを使って、マンガアプリ内で新たにアカウントを作成。アプリの「おすすめ」機能から恋愛マンガをたどるうちに、アダルト作品に行き着いたようでした。

支払いに使われていたのは、通学用にチャージしていたモバイル交通系ICカードの残高や、お小遣いとして渡していたPayPayの残額。外部からの不正アクセスではなく、家庭内で娘自身が行った課金だったのです。

■「お小遣いで買ったんだからいいでしょ」娘の反応に戸惑い

「どうしてこんなものを買ったの?」とEさんが尋ねると、娘は「続きを読んだだけ」と平然と答えました。注意しても「自分のお小遣いだからいいじゃん」と反論され、Eさんは言葉を失ったといいます。

確かに金額はごくわずか。しかし作品の内容を考えると、見過ごすわけにはいきません。思春期にさしかかった娘が、刺激の強い作品に触れることへの不安もありました。とはいえ、好奇心そのものを否定するのも違うように感じたといいます。

Eさんは「成長の一環」と受け止めながらも、見て見ぬふりはできない--複雑な気持ちを抱えたと話します。

■端末の中にもある…デジタル時代の“性教育”

最近の電子書籍アプリは、簡単な操作で作品を購入できる一方、年齢制限の回避も容易です。誕生日を入力するだけで成人向けコンテンツにアクセスできる仕組みのものもあります。

今回の出来事をきっかけに、Eさんはアプリを再インストールし、娘専用の新しいアカウントを作り直しました。それでも「興味そのものを完全に制御することはできない」と実感したといいます。

「やみくもに禁止するより、話せる関係でいることのほうが大切だと感じました。何を見たのか、どう思ったのかを一緒に話すことで、少しずつ信頼関係が育まれていく気がします」と語るEさん。娘はその後もBLマンガを購入しているそうで、Eさん自身も学生時代にBL小説にハマった経験があり、「注意が難しい」と感じる日々が続いているといいます。

■親が気づかない「見えない課金」とどう向き合うか【専門家の意見】

今回の事例について、ネットリテラシーの専門家で株式会社マモル代表のくまゆうこさんに聞きました。大切なのは、「使わせない」よりも「どう使うか」を一緒に考えることだと、くまさんは指摘します。

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古いスマートフォンやタブレットを子どもに譲り渡すケースは非常に多く見られます。親としては、「アプリを消して渡したから大丈夫」と思いがちですが、アカウント情報や支払い設定が残っていることもあり、それが「見えない課金の入り口」になってしまうのです。特に電子書籍やアプリ課金は、金額が小さいために気づかれにくく、本人も「お小遣いの範囲なら問題ない」と思い込んでしまう傾向があります。

大切なのは、「使わせない」よりも「どう使うか」を一緒に考えることです。まず、端末を渡す前に、支払い方法や年齢制限の設定を必ず大人が確認すること。そして、どんなアプリを使っているのか、どんな広告やおすすめが表示されているのかを、定期的に一緒にチェックする習慣をつけましょう。また、課金の履歴を親子で一緒に確認する時間を持つことで、金銭感覚やネット上での責任感を自然に育てることができます。

ネットの世界では、親の「知らなかった」がトラブルの温床になります。技術的なフィルタリングだけでなく、子どもの年齢に応じて「何を見たのか」「なぜそれを選んだのか」を話せる関係を築くことこそ、最も効果的なネットリテラシー教育といえるでしょう。

◆くま ゆうこ ネットいじめ、ネットリテラシー専門家。株式会社マモル代表取締役社長。自身の強みであるWebマーケティングのノウハウを活かし、 いじめや組織のハラスメントを未然に防ぐシステム「マモレポ」を開発する傍ら、学校コンサルティング、いじめ・ハラスメントのセミナー登壇、執筆を行う。

(まいどなニュース特約・松波 穂乃圭)