ムカつくことを言われて、その場ではうまく言い返せない人。「頭の回転が悪いのではなく、優しさと賢さがあるから」とつぶやいた僧侶の青しょうがさん(photoACより「雰囲気イケメン」さん撮影、イメージ画像)
ムカつくことを言われて、その場ではうまく言い返せない人。「頭の回転が悪いのではなく、優しさと賢さがあるから」とつぶやいた僧侶の青しょうがさん(photoACより「雰囲気イケメン」さん撮影、イメージ画像)

Xに投稿された一言が、多くの人の心を揺らしている。

「ムカつくことを言われて、その場ではうまく言い返せない人。あとになって“こう言い返せばよかった”と思いつく人。そういう人は頭の回転が悪いのではなく、腹が立っても言葉を選ぼうとする優しさと賢さがある人です」

この言葉を発信したのは、臨済系寺院に所属する僧侶であり、国家資格キャリアコンサルタントでもある、青しょうがさん。仕事や家庭を持ちながら、坐禅やマインドフルネスを通じた発信を続けている。

■「言い返せなかった自分」を責め続けていた過去

青しょうがさん自身、会社員時代は理不尽なことを言われてもその場で言い返せず、後になって何度も反芻しては自分を責めてきたという。

「言い返せない=頭が悪い、気が弱い、と解釈していました。コミュニケーション本を読んでは“直さなきゃ”と自分を追い込んでいた時期もあります」

だからこそ、僧侶としてSNSで言葉を発信する今、「同じように自分を責めている人」に向けて、この投稿を書いたと語る。

■仏教でいう「忍辱」…我慢ではなく“選択”

投稿の核にあるのは、仏教の教え「忍辱(にんにく)」だ。

「忍辱は単なる我慢ではありません。感情に任せて相手や自分を傷つけないための選択です。言い返せなかったということは、その怒りの火で誰も焼かなかった、ということなんです」

大切なのは黙り続けることではなく、「一度止まれた自分」に気づき、その後どう行動するかを選び直すことだという。

■「怒りを抑える」と「押し殺す」は違う

賛否両論が集まった理由の一つが、「優しさは恨みに変わるのでは?」という懸念だ。

青しょうがさんは、怒りを抑えることと、感情を押し殺すことは全く別だと説明する。

「怒りを抑えるのは、湧いた感情に“気づいて”“観察して”“本当に望む行動を選ぶ”こと。押し殺すのは、怒りそのものを否定して蓋をすることです。後者は確実に苦しくなります」

坐禅では「怒りが湧いたな」と見て、追いかけずに呼吸に戻る。その積み重ねが、感情に振り回されない力を育てるという。

■「優しい人は職場で損をする」への答え

リプライには、「優しい人は職場で損をする」「我慢は恨みに変わる」といった厳しい声も多く寄せられた。これについて青しょうがさんは、一定の理解を示しつつ、こう続ける。

「“言い返せなかった”という事実を、即“損した”“恨みになる”と決めつけなくてもいい。その瞬間、怒りに気づき、相手を傷つけない選択をした自分がいた。そのしたたかさを、まずは自分で認めてあげてほしいんです」

怒りが恨みに変わるのは、「自分を卑下し、否定し続けたとき」だと指摘する。

■後悔との向き合い方は「ぐるぐる回さない」

言い返せなかった後に残る後悔についても、考え方は同じだ。

「後悔が湧くこと自体は悪くありません。“後悔したな”と気づけているのは、心を俯瞰できている証拠です」

感情をしばらく観察し、落ち着いたら「次に似た場面が来たらどう動きたいか」を一つだけ考える。それ以上は思考を回さない…それが禅の基本だという。

■「優しさは弱さではなく、強さ」

最後に、今も「言い返せなかった自分」を責めている人へ、青しょうがさんはこう語る。

「言い返せなかったことは、弱さでも失敗でもありません。あなたは無意識にでも“相手を傷つけない”選択をした。だから自分を押し殺し続ける必要はないし、自責が湧いたら“湧いたな”と気づいて、次どうしたいかだけ決めて、今に戻ってきてください」

言葉のアクセルを踏み込まなかったこと。それは敗北ではなく、ブレーキを踏める強さなのかもしれない。「優しさは弱さではなく、強さ」。この一文が、多くの人の心に静かに広がっている。

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)