福士蒼汰さん
福士蒼汰さん

昨年12月公開の映画「楓」で福原遥とともに主演を務めている他、今年1月開始のドラマ「東京P.D. 警視庁広報2係」(フジテレビ)にも主演するなど、映画やテレビに引っ張りだこの福士蒼汰。この「福士」という名字、他にもマラソン選手として活躍した福士加代子らもおり、比較的よく知られた名字である。

ところが、名字ランキングでは1000位以内というかなりメジャーな名字である一方、実際に「福士さん」に会ったことがあるという人は意外と少ないのではないだろうか。というのも、北海道、青森県、岩手県の3道県に全国の福士さんの約8割が集中しており、それ以外の都府県ではあまり見かけることがないからだ。とくに西日本にはほとんどおらず、極めて珍しい名字となっている。

これだけ集中していると、ルーツはその地域にあると考えるのが常識だ。室町時代には陸奥国岩手郡(現在の岩手県)に国衆の福士氏がいたことが知られており、この一族が岩手・青森両県に栄え、さらに明治以降は北海道に渡って広がったものだろう。

では「福士」という名字は何に由来しているだろうか。

実は「福士」は地名に由来している。そして、福士地名は岩手県や青森県ではなく、遠く離れた山梨県にある。

その場所は甲斐国巨摩郡福士村で、現在も山梨県南巨摩郡南部町福士として残っている。福士は山梨県南部、富士川の右岸(西側)に位置する山間部で、福士川の流域に集落が点在している。

さて、この地域は「南部」といわれ、鎌倉時代には甲斐源氏の有力一族南部氏がいた。南部氏は鎌倉幕府に仕え、鎌倉時代末期に陸奥国糠部郡に転じている。

その所領は広大で、南部氏は各地に配下の武士を置いた。その多くは甲斐国から連れてきており、福士氏もこのときに陸奥国に転じたらしい。

福士親行は南部義政より不来方(こずかた、現在の岩手県盛岡市)を拝領、以後代々不来方城に拠って南部氏に従っていた。

現在は青森県西部に多い他、岩手県山田町に集中している。

◆森岡 浩 姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。学生時代から独学で名字を研究、文献だけにとらわれず、地名学、民俗学などを幅広く取り入れながら研究を続ける。2017年から5年間NHK「日本人のおなまえっ!」のコメンテーターを務めた。著書は「47都道府県名字百科」「全国名字大事典」「日本名門名家大事典」など多数。