兵庫県明石市内で警察官をかたって金品をだまし取る「ニセ警察官詐欺」の被害が急増している。一人暮らしの60代男性は昨年、ほぼ同時期に「ニセ警察官」からの電話を相次いで受け、被害に遭いかけた。「自分はだまされないと思っていた」という男性が、自身の体験を語った。(新田欧介)
昨年11月、「静岡県警の刑事のタカタ」と名乗る男から、男性のスマートフォンに電話がかかってきた。「あなたがマネーロンダリングに加担している疑いがあり、逮捕状が出ています。すぐに静岡県警まで来られますか」
男は、メッセージアプリ「シグナル」を使うよう指示。ビデオ通話で示された逮捕状には、男性の住所や生年月日、実在する裁判官の名前などが記載されていた。驚いた男性は、「これは捜査。あなたには守秘義務があり、一切公言してはいけない」と口止めする男の指示に従った。
その後、仲間とみられる検事役の男からも電話があり、不安をあおられた。数日後には男性宅にやりとりをするためのスマホが届けられた。1日3回ほど「今どこにいて何をしていますか?」とチャットがあり、毎回報告を求められた。
翌月には「金を購入すれば、金融庁の調査で、口座のお金の動きに問題がないか確認できる」と連絡があった。男性は二つの貴金属店のホームページから金を計約2500万円分購入した。一括購入ではなく、日によって買うグラム数を変えるなどの指示があった。
そのころ、今度は「警視庁捜査2課の工藤」と名乗る別の男から、男性のスマホに電話がかかってきた。男性が「タカタ」とのやりとりを説明すると、「それは詐欺だ」と指摘。その上で「フィリピンに犯罪資金が流れており、あなたにマネーロンダリングの疑いがかかっている」と告げた。
「工藤」はLINE(ライン)のビデオ通話での「取り調べ」に応じるよう求めた。画面に映ったのは、黒いスーツを着た中年の男。「タカタ」の時と同じように逮捕状を見せられた。
このタイミングで男性に明石署から連絡が入り、2件とも詐欺であることが発覚した。男性が金を購入した貴金属店が「短期間でそれなりの量の金を買った客がいる」と詐欺被害を疑い、通報したという。同署は、男性が同時期に2件の詐欺未遂事件に巻き込まれたとみて調べている。
寸前で被害を免れた男性。「相手から頻繁に連絡があり、電話もなかなか切らせてくれなかった。手口を知らないまま、『警察の捜査』と言われると信じてしまう。本当に危なかった」と振り返る。男性は明石署のアドバイスで電話番号を変更し、スマホに詐欺電話を防ぐための録音機能を設定するなどの対策を講じたという。
◇
2025年に明石署が認知した特殊詐欺による被害件数は90件(前年比23件増)。被害額は約3億3600万円に上り、前年から1億円近く増えた。このうち、急増している「ニセ警察官詐欺」による被害件数は全体の半数以上、被害額は全体の3分の2を占める。
同署は街頭キャンペーンや高齢者宅の戸別訪問などを通じて注意を促す。また、詐欺で使われやすい国際電話の着信拒否や、最新の詐欺の手口などを通知する県警の防犯アプリ「ひょうご防犯ネット+(プラス)」の活用を勧める。
同署の担当者は「警察官がLINEやSNS(交流サイト)を使って取り調べをしたり、捜査名目で送金させたりすることはない。怪しいと思ったらいったん電話を切り、家族や近くの警察署に相談を」と呼びかける。























