「膝に乗ることは1回もなく、ツンデレ具合はツンツンツンツンデレでした(笑)」
飼い主さん(@14unyan)はそう話し、愛猫くうくんと過ごした日々を思い返す。くうくんは、猫が苦手な旦那さんを虜にした子。口の中にできることが多いと言われる扁平上皮がん(へんぺいじょうひがん)を患い、13歳で天国へ旅立った。
■猫が苦手な夫が1匹の猫に一目惚れ!思わぬ形で始まった猫ライフ
飼い主さんの夫は、猫が苦手。「絶対に猫は飼わない。犬ならいい」の一点張りだった。だが、2012年4月、運命の出会いが…。ふと入ったペットショップで、旦那さんはマンチカンのくうくんに一目惚れ。猫との暮らしが始まることになった。
「私は猫と暮らすことを諦めていたので、ビックリしました。夫は今でも、くう以外の猫は苦手。奇跡の出会いでした」
ところが、お迎えから1週間後、くうくんに異変が…。シャンプーの時、舌を出してハアハアと苦しそうに呼吸をし始めたのだ。すぐに動物病院へ行くと、まさかの事実が判明。実はくうくん、背骨に奇形があり、心臓と肺が押し潰されている状態だった。
このままでは心臓や肺が大きくならず、早ければ数日で亡くなる可能性もある--。そう告げられ、何件もの病院を受診したが、診断は同じ。購入先の店に事情を話すと、「返してくれてもいい」と言われたそうだ。
だが、一緒に過ごした家族を物のように“返品”したくなかった。このまま大事に育てよう--。家族はそう決意し、好物をあげるなど、幸せな時間を過ごしてもらえるよう、より意識し始めた。
■お迎えから長い年月を経て現れた“口の中の異変”
くうくんは、触られることや抱っこが嫌い。家族に噛みつくのも、日常茶飯事だったため、たまに見せてくれる“デレ“が心に染みた。
就寝時には時々、足元で眠ってくれ、背後からの「ニャー」に家族が気づかない時には“ふくらはぎを噛む”という実力行使に出る。くうくんならではの甘え方に、家族はたくさんの笑顔をもらった。
「小さい頃は高いところから降りられなくなった時、私が背中を丸めると飛び乗ってきました。背骨の奇形があったので、もしかしたら、触られると骨が神経に触れ、痛かったのかもしれません」
笑顔溢れる日々が一変したのは、2025年7月9日のこと。くうくんは突然、食事を摂らなくなってしまった。動物病院を受診すると、左頬の内側が赤くなっていることが判明。家族は処方された抗生物質や痛み止めを与えたが、症状は改善しなかった。
そこで、獣医師に相談し、3カ月後の10月2日に病理組織検査を行う。検査後、告げられたのは、化膿性炎症という病名。
「炎症なら抜歯で症状が改善するかもしれないと言われたので、10月20日に抜歯をしました」
ところが、それでも症状は改善しない。抜歯手術から4日後、レントゲン検査を受けると、上顎と下顎がずれていることが分かり、血液検査も行われた。
「血液検査もしてもらったら、腎臓の数値が悪かった。毎日通院して点滴を受けるようになりました」
10月29日、再びレントゲンを撮ると、上顎と下顎のずれが大きくなっていた。そこで、CT検査を受けることに。すると、鼻の後ろから右目の後ろにまで広がった腫瘍が発見された。異変の原因は、扁平上皮がんという悪性腫瘍だったのだ。
■シリンジでの強制給餌は限界… “経鼻カテーテルでの栄養補給“に悩んで
くうくんの扁平上皮がんは治療ができないほど、進行していた。家族は大きなショックを受けたが、少しでも苦しみが軽減するように痛み止めパッチを使用するなど、できる限りのケアを行い始めた。
「命を繋ぐため、経鼻カテーテルをつけて、3時間ごとに少しずつ液状の食事と水分を入れるようになりました」
正直、初めは経鼻カテーテルからでの給餌を受け入れられなかった。シリンジで流動食を口に入れると、痛みから大暴れする姿に胸が痛んだが、経鼻カテーテルはより苦しそうな栄養の摂り方に思え、抵抗感があったからだ。
しかし、実際に経鼻カテーテルを装着してもらうと、イメージが変わった。くうくんは全く嫌がらず、カテーテルを外そうともしなかったのだ。
「落ち着いて、栄養と水分を入れることができました。あんなに痛くて大暴れしても口から入れていた日々は、なんだったんだろう、早くこうしてあげればよかったと後悔しました」
■もっと早く気づけていたら… 愛猫亡き後に感じた“安堵と後悔”
病気はどんどん進行していき、くうくんは口から血と膿まじりのよだれを出すようになった。こまめに口元を拭いても、エリザベスカラーの中にはよだれが溜まり、顎下の被毛は固まる。それでも、飼い主さんはできる限りのケアを続けた。
「腫瘍によって右目が後ろから押され、閉じられなくなると目薬をさすようになりました。私と娘で、毎日ケア。娘がいなかったら、心が折れていたかもしれません」
病気の判明から2カ月ほど経った2025年12月、くうくんは天国へ旅立った。亡くなった直後は悲しみや寂しさよりも、「くうが楽になれてよかった」という思いのほうが強かったという。
「最期のほうは腫瘍が口からはみ出すなど、神様を恨むほどの状態だったので…。できることはやりきったとも思えました」
だが、その一方で、異変に早く気づくことができなかった自分を責めてしまうことはあるという。口の中にできる扁平上皮がんは歯茎が赤くなるなどの初期症状は見られるが、口腔内トラブルとの見極めは難しい。
くうくんの闘病生活に触れると、あらためてその難しさを痛感させられ、早期発見のために自分ができることを考えたくなる。
生まれ持った背骨の奇形により、数日の命かもしれないと言われながら13年も生きてくれたくうくん。マンチカンの平均寿命と言われている10歳を超えることができたのは、間違いなく飼い主さん家族と出会えたからだ。
虹の橋では、あらゆる痛みから解放され、穏やかな時を過ごしていてほしい。
(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)























