(この連載は、WHOの自殺報道ガイドラインに則り、精神医療の専門家の助言を受けています。記事中、個人名の敬称は省略しました)
兵庫県知事選から1年あまりが過ぎた。あの選挙を機に噴き上がった不信感や怒りは、知事・斎藤元彦との距離感を問わず、今も県議たちに向けられている。
県議会百条委員会の委員だった丸尾牧は、亡くなった竹内英明と並び、最も激しい攻撃を受けた。
「一番しんどかったのは、知事選直後の1カ月間ですね。辞めるしかないと考えていた」

知事選直後の2024年12月。事務所には郵便物がいくつも送りつけられ、非通知の電話が繰り返し鳴った。「死ね」「責任取れ」「はよ辞めろや」
見ず知らずの男性がカメラを回しながら事務所に現れたこともあった。「NHKから国民を守る党」党首・立花孝志の支持者を名乗るユーチューバーで、警察に通報すると、その場で連れて行かれた。
自宅には家族がいる。
「僕一人なら乗り越えられるけど、あの人たちは家族の写真を撮ってさらすでしょう。それが一番怖かった」
「やましいことをしていないなら反論すべきだ」。そんな声を受け、知事選の期間中、事実関係を説明する投稿を重ねたが、反応は揚げ足取りや嘲笑ばかりだった。
説明をすればするほど炎上の燃料になると感じ、「ネットでの抵抗はやめよう」と考えるようになっていった。
選挙後、丸尾は自身へのデマや誹謗中傷に対し、開示・削除請求などの法的な対応を進めている。知事選をめぐる動画で竹内を「主犯格」と名指しし、丸尾には「でっち上げをした」と断じたユーチューバーは、謝罪文を送ってきた。
「家族を養うために収益が必要だった」「配信するために投資した費用を回収したかった」「政治家なら攻撃してもいいと思った」。自己を正当化する理由が並んでいた。

矛先は丸尾だけではない。県議の迎山志保は2025年12月5日の本会議で、誹謗中傷がやまない状況について質問した。議場を出た直後、「この黒幕がぁ!」「お前のせいでこんなんなっとんやろ」と怒鳴られ、見知らぬ男性につばを吐きかけられた。知事選後も混乱が続く中で耳鳴りに悩まされ、突発性難聴になったこともある。
斎藤本人や、斎藤県政を評価する人たちへの攻撃も激しさを増している。
斎藤は2025年8月の会見で、自身への殺害予告や危害を加える内容の電話やメールなどが1年間で400件以上あったと明かした。脅迫容疑で逮捕者も出ている。
同年6月と8月には県議の増山誠、元副知事の片山安孝に対し、「人殺し」「子どもも犯罪者になる」などとXで発信したとして、投稿者が名誉毀損容疑で逮捕された。日本維新の会の県議・門隆志は名誉を毀損されたとして、9件の開示請求をし、発信者を特定できたXのアカウントのうち一部について、民事訴訟を起こしている。

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