「親友」だと思っていた相手に、自分とは別の「親友」がいると知ったら...。そんな誰もが一度は覚えのある複雑な感情を繊細に描いた漫画『私だけ親友だと思っていた話』(作者:信豆めきさん)が、SNSで注目を集めています。
主人公は友人も多く、明るく人気者な今どきの女子高生ですが、「親友」と呼べる存在はただ1人だけ。それは、どこか飄々とした雰囲気をまとった、主人公とはタイプの異なる同級生の少女でした。
ある日、何気なく彼女が食べているグミについて尋ねると、返ってきたのは「親友がくれたやつ」という言葉でした。その瞬間、主人公は言葉を失います。表面上はいつも通り明るく振る舞いながらも、胸の奥では「親友だと思ってたの私だけだったってこと?」というショックが広がっていきます。
帰宅後、主人公は同級生と一緒に写った写真を見つめながら、これまでの思い出を振り返ります。「その子とは、いつ知り合ったんだろう」「私の方がもっと早く出会ってれば…」。そんな思考の末、彼女にとっての親友に対し、思わず「消えてくんないかな…」と心の中でつぶやいてしまうのでした。
翌日、学校で同級生から告げられたのは、その親友が交通事故で亡くなったという事実でした。腫れた目で淡々と話す同級生を前に、主人公はかける言葉が見つかりません。そして、自分が抱いてしまった黒い感情に強い罪悪感を覚えるのでした。
その夜、主人公は奇妙な夢を見ます。真っ白な世界にぽつんと置かれた勉強机..それは同級生自身を象徴しているようでした。引き出しを開けると、家族らしき人々の写真や、思い出の写真が次々と現れます。その中には主人公の写真もあります。
しかし、ひとつだけ鍵のかかった引き出しがありました。そこが「親友」の場所なのだと理解した瞬間、主人公の中に怒りの感情が噴き出します。「死ぬなよ勝手に」「勝ち逃げするな!」と叫びながら必死に引き出しを開けようとしますが、扉が開くことはありません。涙を流しながら目を覚ました主人の表情には、どこか決意の色がにじんでいました。
そして、学校で、元気のない同級生に主人公は声をかけます。すると、同級生は堰を切ったように号泣し、2人は抱き合うのでした。主人公は「私が死んだ時も、同じくらい泣いてくれるのかな」と考えながら、自分が彼女の支えになろうと決めたようです。
読者からは「自分が彼女の悲しみを利用して、代わりもしくは埋め合わせしようとする彼女がずるいとも取れる」や「とても引き込まれました」などさまざまな声があがっています。そこで、同作について作者の信豆めきさんに話を聞きました。
■多くの人がどこかで身に覚えのある感情ではないか?
-同作を描くきっかけを教えてください。
昔、友人が私以外の友人の話をしているのを聞いた時、「この人には私以外にも、しかももっと親しい友人がいるのかもしれない!」と感じ、相手が誰だったかは思い出せないものの、強い衝撃を受けた記憶があります。
大人になった今であれば当たり前に受け止められることですが、学生の頃はこうした感情をデリケートに受け取るのではないかと思い、その記憶を膨らませて作品として描きました。
ー特に気にかけたことや意識したテーマを教えてください。
「親友」がどこの誰なのかをあえて明かさないままにし、「お前誰だよ」という主人公の気持ちに、読者の方にも共感してもらえる構成を意識しました。
その人物の正体は最後までわからず、「親友の引き出し」は決して開くことがありません。
そのどうすることもできない怒りや虚しさが、少しでも伝わればいいなと思いながら描いていました。
-同作を通じて読者にどのようなことを感じ取ってもらいたいですか?
作中で描かれるほど強い嫉妬心や虚無感、罪悪感、独占欲を誰もが経験しているわけではないと思います。ただ、程度の差こそあれ、多くの人がどこかで身に覚えのある感情ではないか?とも感じています。
そうした気持ちを少し思い出しながら、共感しつつ読んでいただけたら嬉しいです。
(海川 まこと/漫画収集家)























