兵庫が生んだシンデレラガールが大舞台に乗り込む。6日に開幕するミラノ・コルティナ冬季五輪のスピードスケート・ショートトラック女子日本代表、長森遥南(はるな)(23)=アンリ・シャルパンティエ。神戸市東灘区で生まれ育ち、関西学院大まではゴルフとの“二刀流”に励んだ。昨年春に西宮の洋菓子メーカーに入社し、競技を継続。同12月の全日本選手権で3冠を成し遂げ、本人も予想しなかった五輪代表の座に大逆転で滑り込んだ。
■兵庫で成長、ゴルフで培った体幹武器に
出合いは偶然だった。幼稚園の卒園旅行でスケートに興味を持った。母は「浅田真央さんのように」とフィギュアを望んだが、参加した体験会がスピードスケートのクラブ「新神戸スピードゼミ」。仲間と会うのを楽しみに遊び感覚で滑るうち、ショートトラックにはまった。
当時、渦が森小学校の2年生。同じ頃、新聞記事で知ったゴルフ教室にも通い出した。いつしか「スケートで五輪、ゴルフでプロ」が夢になった。
進学した親和中・高でも両立。ショートトラックでは高2冬に初めて国際大会に立ち、ゴルフでは日本ジュニア選手権に出て、プロテストも受けた。「誰もやっていないことをやるのが楽しい」。二足のわらじで夢を追ったが、ゴルフは同学年で現在米ツアーで戦う双子の岩井明愛(あきえ)、千怜(ちさと)姉妹の実力を目の当たりにし、区切りをつけた。
大学ではゴルフ部にも入ったが、軸足はスケートに置いた。世界ユニバーシティー冬季大会や冬季アジア大会など国際大会を経験。卒業後は小学校教員の道に進むことも考えたが、地元の洋菓子製造販売のシュゼット・ホールディングス(HD=西宮市)からサポートを受け、現役続行を決めた。
昨年4月から、同社氷上競技部の杉尾憲一監督(63)が指揮官を兼ねる阪南大(大阪府松原市)が練習拠点となり、1人暮らしを始めた。男子日本のエース宮田将吾(日本通運)らと同じ厳しい練習をこなしつつ、食への意識も高めて5キロ減量。体脂肪率も5~6%減らし、体の切れが増した。ゴルフで培った体幹の強さや集中力も武器に、持ち前の加速に磨きをかけた。
一方、今季は日本スケート連盟の強化指定を受けられず、最終選考会の全日本選手権も「五輪は頭になかった」。無欲の滑りで女子では18大会ぶりの全3種目制覇。五輪代表の発表で最後に名前が呼ばれ「頭が真っ白」とうれし涙を流した。
驚いたのは五輪代表コーチを担う杉尾監督も同じ。「圧倒的に強かった」と望外の成長をたたえ「目標を定めると力が出るタイプ。日本のメダルは彼女が本番までにどれだけ伸びるかにかかっている」と期待する。
「夢の舞台で戦える。積み重ねてきたものを精いっぱい出し切りたい」と長森。シンデレラストーリーはまだ終わらない。(初鹿野俊)
■オフシーズンは西宮でフィナンシェ製造 試合会場に同僚、エールを力に変え
長森遥南の所属先「アンリ・シャルパンティエ」は、2025年に入社したシュゼット・ホールディングス(西宮市)の主力洋菓子ブランド名。オフシーズンには看板商品フィナンシェの製造現場に立つ。
同社は13年、地元の西宮市に通年型リンク「ひょうご西宮アイスアリーナ」が完成したのを契機に、初心者向けの体験教室を協賛。兵庫県スケート連盟からの要請もあり、地元で働きながら競技を続けたい選手の受け皿として、18年に氷上競技部を設け、長森が4人目の採用となった。
昨年末の全日本選手権を現地観戦したという蟻田剛毅(ありたごうき)社長(51)は「地域貢献で始めたことで、スカウト活動も全然していない。(五輪切符は)すごいこと。漫画みたい」と本人の努力や周囲の支えに賛辞を贈る。
長森は昨年4~6月、フィナンシェの生地を混ぜる工程に従事した。以降はスケートに専念してきたが、戦績報告のための出社時や試合会場で同僚からエールを受け「応援されるのがうれしい」と力に変えた。蟻田社長は社員とともにイタリアに駆けつける予定だ。(初鹿野俊、大盛周平)























