首都ソフィアにあるアレクサンドル・ネフスキー大聖堂
首都ソフィアにあるアレクサンドル・ネフスキー大聖堂

先日、トルコとブルガリアを訪れました。両国とも、私にとっては初渡航でした。そのため、いろいろと驚きがあり、個人的にとても有意義な旅行となりました。ブルガリアではEU加盟国にも関わらず、ロシア語で話しかけると、中高年以上の方々に喜ばれました。ロシア語を敬遠する国が増えている中、なぜブルガリアはロシア語を受け入れる土壌があるのでしょうか。

■ブルガリア語とロシア語の近さ

ブルガリアはバルカン半島にあり、トルコやギリシャといった国々と国境を接します。人口は640万人ほど、面積は日本の3分の1ほどです。民族構成はスラヴ系のブルガリア人が8割を占め、次いで多いのがトルコ人です。ブルガリアは2007年にEU加盟国となり、今年からユーロを導入しました。

そんなブルガリアの公用語はブルガリア語です。ブルガリア語はスラヴ諸語の南スラヴ語群に属します。スラヴ諸語の代表格といえばロシア語です。ブルガリア語はロシア語と同じくキリル文字を用い、英語で使われるラテン文字は使いません。

また、ブルガリア語の挨拶や単語はロシア語と似たものが多く、ロシア語学習者なら親近感が湧くと思います。一方、ブルガリア語はロシア語のような格変化は存在せず、文法面ではロシア語との差異が目立ちます。

私は大学の第二外国語でロシア語を選択し、今でも懲りずにロシア語を勉強しています。一方、ブルガリア語は1ミリも勉強したことはありません。挨拶程度ならできますが、文章となると、ブルガリア語はお手上げ状態。そんな状態でブルガリアに行きました。

■ロシア語は大歓迎

ブルガリアでは、40代以下の方はだいたい英語が通じました。一方、50代以上の方はあまり英語が通じませんでした。そこで、恐る恐るロシア語で尋ねてみました。なぜ、ロシア語を「恐る恐る」話したのか。なぜなら、EUに加盟している中東欧諸国ではロシア語が嫌われているというイメージがあったからです。かつて、ポーランドのホステルにて、ポーランド人男性に対し、「ロシア語をどう思うか」と尋ねたところ、「嫌いだ」と即答されました。また、バルト三国のリトアニアでは、博物館にいた年輩の女性にロシア語で尋ねたところ、英語で返されたこともありました。

こんな経験があるからこそ、ロシア語で年輩のブルガリア人に尋ねたのです。すると、「君はロシア語が話せるのか!」と満面の笑みを浮かべて、流暢なロシア語で応えてくれるではありませんか。それも1人だけではありません。この旅で出会った年輩のブルガリア人が皆、同じ反応を示しました。これには本当に驚きました。

■ロシアとオスマン帝国との戦争により独立したブルガリア

少し話は変わりますが、私は首都ソフィアにある歴史博物館に行きました。博物館ではオスマン帝国下ながら、広範な自治権を有する19世紀に成立したブルガリア自治公国の存在が強調されていました。

ブルガリアは約500年にわたり、オスマン帝国の支配を受けました。1877年から1878年にかけて、ロシア帝国とオスマン帝国が戦い、ロシア帝国が勝利。その後のサン・ステファノ条約により、ブルガリアは事実上、オスマン帝国からの支配を脱しました。

このような経緯があるからこそ、ブルガリアは他のEU諸国と比較すると、ロシアへの嫌悪感は薄いように感じました。現にソフィアには、オスマン帝国に勝利したロシア皇帝アレクサンドル2世の銅像が美しい状態で立っています。

なお、政治は別です。2022年のロシアによるウクライナ侵攻により、ロシアとブルガリアの関係は良好とはいえません。ブルガリアはロシアによるウクライナ侵攻を批判し、ロシアに制裁を課しています。

ロシア語や過去の歴史の向き合い方から、ブルガリアとロシアの関係が垣間見え、実に興味深かったです。

(まいどなニュース特約・新田 浩之)