家族や過去など、どれだけ嫌なものでも自分の力ではどうしてもくつがえせないことがあります。しかし、これから先をどう生きるかは自分次第なのかもしれません。テレビアニメ脚本家で漫画原作者の猫田まんじまるさんの作品『柵の外』は、苦しみながらも困難を乗り越える友人と作者自身の姿が描かれています。同作はX(旧Twitter)に投稿されると、約1700のいいねが寄せられました。
ある日、作者のもとに1通の年賀状が届きます。その送り主は、中高と同じ学校だった親友・Kでした。作者は中1のときいじめを受け保健室に引きこもっていましたが、Kはそんな作者を教室に連れ出してくれた仲です。
そんなKは高校を卒業するころ、「お父さんがね学費ぜんぶ使っちゃってたの。18歳以降のね」と話し、学費を借金でまかないながら美容師となります。
その後、Kは彼氏と結婚して広島へと移住しますが、離婚し大阪へと移り住みます。そしてKは大阪で、詐欺をした罪で仮釈放中の男と出会いました。
作者は「それはちょっとあやういような…」と意見を言いましたが、子どもができたためKはその男と結婚します。しかし彼は、Kに4時間正座をさせるといったDVを加え、結局Kとその子どもはシェルターへと保護されることになりました。
バツ2となったKは、ある日作者に「フラッシュバックが続くときどーしてる?」と相談します。作者はかつて10件近く医者に行ってみたことや、第三者的な意見をもらったら俯瞰して自分を見れるようになるかもとKに伝えました。
それからしばらくして、作者のもとに「また結婚することになったの」とKから連絡がきます。Kによると、今回の旦那はちゃんと働いていてまともなようですが、どこまで旦那にこれまでのことを話せばいいか迷っているようです。
作者はかつてのことを「話せる相手の方がいいと思う」と伝え、Q&Aサイトなどに投稿してみてもいいかもしれないとアドバイスをします。もちろんK自身が自分のことを話すことで物事が解決するのが理想ですが、場合によってはそれで周囲の人生をガラリと変えてしまうこともありえるからです。
今年届いた年賀状には、Kとその家族の幸せそうな写真がプリントされていました。安心した作者は、今まで何度も失敗しながら困難を乗り越えてきたKを思い出します。そして困難の先に、ようやくKの幸せが待っていたのでした。
読者からは「とても前向きになれる…」「読んで気持ちが楽になった」などの声が挙がっています。そこで、作者の猫田まんじまるさんに話を聞きました。
■「あなただけじゃない」と作品で伝えたかったのかもしれない
-作品を描いたきっかけは
実は5年前に描いた作品なので、当時なぜ描いたのか全く覚えてないのですが……。私がエッセイ漫画を描くときは、日頃生きていて何かに気がついたとき、それが心の中に留めておくことができないとき。例えば、絵なり文章なりなんでもいいんですが、感じたことを外に放出しないとやっていられないときがあるんですね。
なので、5年前に『どうしても描かないとやっていられない何か』があったのだと思います。
-Kちゃんのめげない精神には多くの読者から反響がありました。
彼女は現実を直視する能力に長けていて、中学、高校と近くで見ていましたが、身に降りかかった不幸なり理不尽なことを、安易に投げ出さないし、他人のせいにしません。
他責思考ではなく、自責思考の人。何か起きたときに、一旦それらをまるっと受け入れ、『そこからどうしていくか?』という強さがある女性です。その強さ、精神的なタフさが、何度も柵を乗り越える原動力になったのではないかと思います。
-作品に込めたメッセージや、伝えたかった部分を
色々な想いがあるので簡潔に答えるのは難しいのですが、漫画の中にある『トラウマ』とは、自分が義父に性的虐待を受けた過去のことです。日常に支障をきたすほどのトラウマにはなっていないと思うのですが……。まぁ当たり前に男性不審になりますし、安易に近づいてくる男性を警戒します。
自分の過去を好きな人に話したときに、「引かれやしないか」とかも考えますし。性加害を受けた側って、その事実から派生する悩みや困難って永遠につきまとうんですね。そして、性加害を受けた側は、ほとんどが外に言えないでいると思います。
そういう気持ちを1人で抱えていると、結構しんどいと思います。だから、そういう人たちに向けて、『私は性的虐待を受けました。でも乗り越えようとしています』と伝えることで、「自分だけじゃない」と思ってもらえるんじゃないかと思って。「あなただけじゃない」というメッセージを一番ダイレクトに伝えたかったのかもしれません。
あとはさまざまなことがあったけど、向き合って生きてる。という事実を漫画で証明したかったのだと思います。
(海川 まこと/漫画収集家)
























