散々ゆとり世代って言われて怒られてるんだ(今井大輔さん提供)
散々ゆとり世代って言われて怒られてるんだ(今井大輔さん提供)

スーパーのレジに並んでいると、前の人の会計に時間がかかることがあります。急いでいると、この状況にイライラしてしまう人もいるかもしれません。漫画家の今井大輔さんがInstagramに投稿した作品『レジ』では、そんなスーパーのレジで起きたトラブルを女子高校生が解決する様子が描かれています。

物語は、女子高生がスーパーのレジに並んでいたところから始まります。前では年配の女性が会計をしていましたが、小銭を落としたり、財布からお金をうまく取り出せなかったりと、かなり手間取っているようです。それを見ていた後ろに並ぶ男性は、次第にイライラした様子を見せ始めます。レジの女性は年配の女性に優しく声をかけますが、男性は待ちきれなくなり「早くしろよ」と声を荒げました。

店員が男性を落ち着かせようとしても男性の怒りは収まりません。「十分待った」「年齢だけをできない理由にされて納得なんてできるかよ」と、店員にも怒りをぶつけます。さらに男性は、「こっちは普段ことあるごとにゆとり世代は使えない」「できないのはお前のせいだって怒鳴られてるんだ」と、目の前の出来事とは関係のない日頃の不満まで口にし始めます。そんな男性の言葉を、女子高生は後ろでじっと聞いていました。

そして、女子高生は男性に対して「それを許してはやれぬか?」と口を開きます。突然の武士のような言葉に、その場にいた人たちが唖然とするなか、女子高生は男性に対して「お主の申すこと至極まっとう」と伝えたうえで、「お主の母や祖母は同じぐらいの歳であろう?どこかで同じように若者に怒鳴られているのではと思うと哀れに思わぬか?」と問いかけます。最後には、「お主も本当は許されたかったのだろう?」と問いかけ、怒っている男性をただ責めるのではなく、その人が抱えているものにも目を向けながら、許すことを伝えるのでした。

この投稿に「真っ直ぐな言葉に思わずうなずきました。」「女子高生が言うとかっこいい」などのコメントがあがっています。そんな同作について、作者の今井大輔さんに話を聞きました。

■「許す」という選択を渡した主人公 武士の姿に込めた思い

ー 同作を通して、特に伝えたかったテーマや思いを教えてください。

一言で言うなら、よくある言い回しですが「他者への理解と想像力を持とう」なのかなと思います。このお話は1話8ページの読み切り連載で、当時、実際にあったことなどをもとに描いてたのですが、このお話を描く時もスーパーで同じ状況を経験しました。僕の前のおばあさんが、頑張って支払いをしてるのですがなかなか出来ず…。作中でイライラした若者がお年寄りに言い放ったことは、その時僕自身が正直に思ったことでもあります。でも、お年寄りは別にわざと時間をかけてるわけじゃなく、できる能力で急いでるので仕方ないよな、「自分の親も同じように自分くらいの若者に何か思われてるかもしれないな…」ということも同時に思いました。

それを当時のアシスタントさんに話したら、「なるほど、自分の親だったらと想像してみたらイライラは減るなぁ」と納得したのを見て、これは多くの人がハッとする思考法かもしれないなと作品にしました。

ー 主人公の人物像に込められた思いがあれば教えてください。

先ほど触れたように、作中の若者の言葉は僕自身がまず思ったことで、多くの人が並ぶレジでなるべく急ぐのはマナーだとも思うし、間違ってないと思ってます。もっと言えば、お年寄り以外にも、この場にいた主人公、若者、店員さんにももっと出来たことはあるだろうなと思います。みんな70点、でもそれが社会かなと思います。今回の原因は若者のイライラで、その理由は、きっと働く若者が1番時間を搾取されて頑張ってるからで、そのイライラすら仕方ないよなと思います。

この場に必要なのは、「落ち着け、誰も悪くない」という第三者の冷静な目で、若者に近い年齢で、特に急いでもいない主人公に、冷静な第三者の役目を与えました。

ー 最後に「今日聞いた日本史の先生の言葉」に思いを馳せる描写がありますが、この場面を入れられたのはなぜでしょうか? 

この話では説明されてないですが、主人公には、悪を成敗する将軍様の時代劇で日本語を覚えたという設定があり、上から目線の時代劇台詞で話してます。学校の授業でも特に日本史が好きで、先生の話もよく聞いているという設定です。あとは連載の構成とテクニックの話になるのですが、基本的に強い言葉で斬っていく連作なので、途中で味付けの違う話がほしくて、相手を悪として斬らない話を作りました。その際、主人公の行動の違和感を消すための説明として日本史の先生の話を加えました。

(海川 まこと/漫画収集家)