立ち上がれないころのさくらちゃん(北村 広美さん提供、Instagramよりキャプチャ撮影)
立ち上がれないころのさくらちゃん(北村 広美さん提供、Instagramよりキャプチャ撮影)

てんかんの発作で緊急入院し、一時は意識のない状態が続いた柴犬のさくらちゃん。退院後、飼い主さんを悩ませたのは、自力で立てないさくらちゃんをどうやって通院させるかということでした。そこで役立ったのが、在庫セールで見つけた500円の子ども用ビニールプール。飼い主の北村広美さん(@hiromi_insta_2222)に、さくらちゃんの回復と介護の日々について聞きました。

■「もう最後かもしれない」退院後に起きた変化

さくらちゃんは、推定15歳の保護犬です。約8年前に保護された際、動物病院で7歳前後と診断されました。

8月28日にてんかんの発作を起こし、緊急入院。昏睡状態が続き、獣医師からは「もう最後かもしれないので、ご自宅で過ごさせてあげてください」と告げられたといいます。

ところが、退院後の9月1日頃から少しずつ回復し始めました。9月3日にはドッグフードを欲しがり、外を歩きたそうな様子も見せるように。その後、短い距離なら自力で歩けるまでになりました。

「次の受診では、先生から『正直言って奇跡ですね、この回復は』と言っていただきました」と北村さん。現在も昼夜逆転や夜泣きは続いていますが、さくらちゃんの回復を見守っています。

■抱きかかえて車へ運ぶたび、飼い主にも負担が

退院直後のさくらちゃんは、自力で立ち上がれませんでした。通院には抱きかかえて車まで運ぶ必要があり、北村さんたちの腰にも負担がかかっていたそうです。

車内で体勢を保つことも悩みでした。座席にそのまま寝かせると、車の揺れで体が滑ってしまいます。

「寝かせたまま運べるものはないか」。そう考えていたとき、トイザらスの在庫セールで目に留まったのが、花柄の子ども用ビニールプールでした。価格は500円。試しに車の後部座席に置いてみたといいます。

北村さんによると、縁があることでさくらちゃんの体が横に滑りにくくなり、寝かせた姿勢で運びやすくなりました。プールごと抱えて運べるため、直接さくらちゃんを抱きかかえるよりも負担が少なかったそうです。

「さくらの表情も、心なしか穏やかになったように感じました」

北村さんはプールの中にタオルなどを敷き、車内では揺れで動かないよう注意しているといいます。この運搬方法について、獣医師には個別に相談していません。さくらちゃんに合わせた北村さんの工夫として投稿されたものです。

■自宅では、さくらちゃんの「散歩道」にも

ビニールプールには、もう一つの使い道がありました。自宅のサークルケージ内に置くと、プールとケージの間に通り道ができます。北村さんによると、さくらちゃんは壁や狭い隙間を避けながら、そこを歩けるようになったそうです。

ただ、プールには爪や牙で穴があきました。現在は自宅ではサークルケージを主に使い、プールもケージ内での歩行補助と車での移動に活用しています。

投稿には、愛犬の介護で子ども用プールを使った経験を持つ人からも声が寄せられました。認知症になった愛犬がプールの縁に寄りかかりながら歩いていたという人や、別のベビー用品を介護に役立てたという人もいます。

■「ひとりで抱え込まず、気持ちを共有して」

北村さんにとって、介護で最もつらかったのは、夜中に鳴き続けるさくらちゃんのそばで、原因が分からないまま過ごす時間でした。

「『痛いのかな、不安なのかな』と思いながら、何もしてあげられない時間が精神的にとてもこたえました」

睡眠を削られる日々の中でも、身近なものを使った工夫によって、さくらちゃんの表情が穏やかに見える瞬間があったといいます。

「特別な介護用品でなくても、身近なもので工夫できることがあります。そして何より、ひとりで抱え込まず、同じ経験をした人と情報や気持ちを共有することが、心の支えになると感じています」

さくらちゃんに合う方法を探しながら、北村さんは今日もその歩みを支えています。

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)