借金問題を抱えたとき、多くの人が気になるのが、自己破産後の生活です。株式会社cielo azul(福岡市中央区)が運営する『債務整理相談ナビ』は、自己破産経験者を対象とした13本の実態調査を実施、その結果をまとめた「自己破産の実態レポート」を公開しました。同レポートから見えてきたのは、「手続き前に想像していた不安」と「実際に起きたこと」には、かなりの差があるケースがある一方、事前には想像しにくい負担も存在するという実態でした。
この調査は、自己破産の経験者を対象として、2026年5月~7月の期間にインターネットで実施されました。なお、13本の調査テーマと対象人数については、以下の通りとなっています。
「失ったもの(財産・生活)」:免責許可を得た経験者100人
「後悔・満足度」:自己破産の経験者102人
「破産管財人との面談」:管財事件(少額管財含む)の経験者100人
「車の扱い」:手続き当時、自己名義の車を所有101人
「生命保険の扱い」:解約返戻金のある生命保険に加入100人
「銀行口座への影響」:自己破産の経験者100人
「夫婦関係・離婚」:手続き当時、配偶者がいた100人
「年金・老後」:50歳以上の経験者100人
「慰謝料・養育費」:手続き時に離婚していた100人
「借入先と借金総額」:自己破産の経験者100人
「子どもへの影響」:手続き当時、18歳未満の子どもがいた100人
「携帯電話の契約」:手続き後に契約・分割購入を申し込んだ100人
「無料相談の利用」:自己破産について無料相談を利用した100人
まず、「自己破産の手続き前の不安と実際に起きたこと」を見ると、「子どもの進学・進路」については、54.0%の人が「悪影響を心配していた」と回答。しかし、実際に「受験先の変更」や「奨学金の活用」に至った人は21.0%でした。
また、「転校や友人関係の変化」については、37.0%が心配していたのに対し、実際に転校・転園が発生したのは16.0%となり、自己破産をする前には子どもの生活への影響を大きく心配していた人が多かったものの、実際の変化はそれより少ないことがわかりました。
「夫婦関係」についても、手続き前の不安と実際の結果には差が見られ、借金問題が原因で、離婚を考えた経験がある人は79.0%。一方、自己破産の手続き後に実際に離婚した人は14.0%でした。
さらに、自己破産の手続きそのものについても、不安と実際の印象に違いが見られました。
破産管財人との面談について、「厳しく追及される感じで怖かった」は5.0%にとどまり、「思っていたより話しやすく穏やかだった」(64.0%)や「必要なことだけ淡々と確認された」(28.0%)など、合わせて約9割が「怖くなかった」側の回答となりました。
では、自己破産をすると、実際にはどのような財産を手放すことになるのでしょうか。
「実際に手放した財産」を調べたところ、「預貯金の99万円を超える部分」(59.0%)、「自動車」(35.0%)、「不動産」(25.0%)が上位に。一方で、「特になし(自由財産の範囲内で収まった)」(20.0%)という意見も一定数見られました。
また、「生命保険」については、回答者全員が解約返戻金のある保険に加入していたにもかかわらず、「解約」となったのは54.0%で、34.0%は少額のため維持できていました。他方、手続き後に「新たな生命保険に加入」(71.0%)できた人は7割を超えています。
「銀行口座の凍結」は、借入のある銀行に限られるため34.0%は凍結されておらず、凍結を経験してその期間を答えた61人のうち、59.0%は3カ月以内に解除されていました。
「携帯電話」については、手続き後に申し込んだ100人のうち90.0%が回線契約をできており、影響が出やすいのは通信そのものではなく、割賦販売にあたる端末代金の分割払いでした。
しかし、すべてが「思っていたより大丈夫だった」という結果ではありません。
特に大きな影響が見られたのが「自動車」です。自己破産の手続き当時、自分名義の車を所有していた101人のうち、74.3%が「何らかの形で車を手放した」と回答。
さらに、車を手放した人の58.7%が「通勤・通学に支障が出た」と答えているほか、24.0%が「送迎ができなくなり、家族の生活にも支障が出た」と回答しました。
車が生活の足になっている家庭では、財産を手放すことそのものだけでなく、その後の生活への影響まで考える必要がありそうです。
また、「生命保険」を手放した64人のうち、76.6%が「家族の将来保障がなくなり不安だった」と回答。自己破産の手続きそのものだけでなく、その後の家族の生活設計まで考えることが重要だと分かります。
さらに、手続き時点ですでに離婚していた100人のうち、81.0%が「慰謝料または養育費の支払い義務」を抱えており、そのうちの72.8%は自己破産後も支払いを継続。一方、21.0%は支払いが困難で交渉中でした。
なお、養育費など一部の債権は破産法253条1項の「非免責債権」とされ、免責許可決定が確定した場合でも支払い義務が残ります。
次に、「自己破産に関する事前説明」について調べたところ、年金や老後の生活設計について「まったく説明を受けなかった」とした人は35.0%。
また、管財事件になることについて「事前説明が不十分」、または「ほとんどなかった」とした人は34.0%、「車の扱い」についても、28.7%が「事前説明が不十分だった」としています。
一方、「子どもへの影響」を調べた調査では、専門家に相談したことで、62.0%が「不安が解消・軽減された」と回答。専門家に相談した89人に限ると、約7割にあたる結果となりました。
自己破産について無料相談を利用した100人のうち、「最初に相談した事務所に、その場で依頼した」人は35.0%。そのほか、「他の事務所にも相談した」は32.0%、「別の手続きを選んだ」は17.0%、「手続きを行わないことにした」は13.0%となり、最初の相談先ですぐに決める人だけではなく、複数の相談先を比較したり、自己破産以外の方法を選んだりする人も一定数いることが分かりました。
本調査で特に目を引く数字が、自己破産を経験した人に「手続きをするタイミング」について尋ねた結果です。
借金問題を抱えていても、「もう少し頑張って返済しよう」と考えてしまう人は少なくありません。しかし、自己破産経験者102人のうち、「もっと早くすればよかった」とした人は94.1%に達しており、問題を抱え続けることそのものが、生活上の負担を大きくしていた可能性もうかがえます。
「自己破産に至った借入先が複数社になった理由」については、「返済のために借り入れを繰り返した」(43.0%)と「1社の限度額では足りなくなった」(40.0%)を合わせて8割を超えており、単純に大きな買い物をしたことだけが原因ではなく、「返済するために新たな借入をする」という状態が、借入先の増加につながっていたケースも多かったといえます。
ちなみに、「自己破産を決断した時点での借金総額」は、「500万円未満」(68.0%)が7割近くを占め、自己破産を判断する際には借金の金額だけではなく、収入と返済のバランスが重要な判断材料になっているとしています。
今回の13調査を横断して見ると、自己破産については、手続き前に抱いていた不安が実際より大きかった項目がある一方で、車や生命保険など、生活に直接影響する部分では現実的な負担が生じていることも分かります。
特に、「子どもの進学や転校への影響」「夫婦関係」「財産の処分」「車や生命保険」「銀行口座」「携帯電話」「年金・老後」「慰謝料・養育費」などは、人によって事情が大きく異なります。
そのため、「自己破産をすると必ずこうなる」と一括りにするのではなく、自分の場合には何が残り、何に影響が出る可能性があるのかを、手続き前に確認することが重要です。
◇ ◇
【出典】
▽株式会社cielo azul/自己破産の実態レポート-経験者13調査でわかった「手続き前の不安」と「実際に起きたこと」
























