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(9)二度目の入居期限 大阪 延長でもめる春 憂うつ
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 大阪府枚方市の住宅都市整備公団・香里ケ丘団地にある集会所。八月末、公団入居被災者連合会(会長・湊文彦さん)のメンバーが集まった。震災後、あっせんで公団の空き室に入り、入居期間延長などに取り組んできた人たちだ。

 宝塚市で被災した清島輝夫さんは、同市から届いたアンケートに腹立たしい様子で話した。

 アンケートは公団を出るめどを聞いてきた。「マンションが建つ来年五月まで入居を続けたい」と回答すると、市の担当者から電話があった。「五月末はいけません。来年三月末までと訂正しておきます。(別の公団に住む)息子さんも連絡がつかないので、同様にしておきます」

 公団は今春、入居期限を一年延長し、来年春までとする方針を発表している。清島さんも、それはわかっているが、あまりなやり方だと感じた。

 「ほかに行くところがないから、ここに来た。入居延長がなければ、マンション再建まであと二回引っ越さなあかん。無駄なお金を使うことになる」

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 あっせんされた公団住宅は近畿圏を中心に約三千二百戸。老朽化で建て替え計画を進めている団地の空き室が中心だった。公団が市に貸して、市があっせんする形を取った。清島さん宅に宝塚市からアンケートが来たのも、こうした手順を踏んでいるからだ。

 今春も「延長」をめぐってもめた。公団・市側は「建て替えのため早く転居を」と要請、延長を求める被災者とぶつかった。結局、公団は三月ぎりぎりに「家賃負担を条件に一年延長」と方針転換したが、市の対応が、被災者の不信を募らせた。

 芦屋市は「昨年秋から移転を強く指導してきた。入居延長を認めれば、退去した人に二枚舌を使うことになる。行政として絶対にできない」として、四月以降も残った八世帯に退去を求め続けた。

 被災者連合会の湊さんらは交渉を続け、決着したのは七月。市は家賃支払いの特設口座を設け、延長を容認する姿勢を示した。ただし正式に延長を認める文書は出さないままだった。

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 八月末現在、公団には二百三十世帯が入居。八十世帯が兵庫県、残る百五十世帯が大阪府にある。神戸市からの入居者が百世帯余りを占め、西宮が四十三世帯、宝塚が二十二世帯、芦屋が八世帯となっている。

 同連合会が会の集まりで、転居めどを聞いた際、「来年三月まで」は少なく、「来年中なら」が約八割だった。

 公団は「来春までには移っていただけると考えている。延長はない」と繰り返し、市側は話した。

 「延長はもうない、と説明はするが、その時に仮設住宅が空いているのか分からず、仮設に移れます、とも言えない。自宅再建がその後になる人にも説明のしようがない」(西宮市仮設住宅対策室)

 「来年三月にまた問題になるとは思ってはいるが、どうしてくれとは、うちの方からは言えない」(神戸市生活再建本部)

 団地の被災者らは「仮設住宅が延長できるのだから、ここも」と望んでいる。どうすればいいのか、はっきりしない状態に、湊さんは憂うつそうに漏らした。

 「今はちょっと落ち着いているが、来春はまたひともんちゃく。行政とやりあうために会をつくったんじゃあないのに」

1996/9/26
 

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