病気などで頭髪を失った人の医療用ウイッグ(かつら)を作る髪を寄付するヘアドネーションのため、津名東小学校(淡路市生穂)3年の高田丞(じょう)さん(8)が3年伸ばした髪を切った。同じように髪を提供した姉の影響で関心を抱き、思いを持ち続けた。丞さんは「ウイッグを着けた子が元気になれるよう役立ってほしい」と願う。(荻野俊太郎)
丞さんがヘアドネーションに興味を持ったのは、幼稚園年長の時。同校6年の姉慧芽(えめ)さん(12)が当時、母彩さん(48)の勧めで髪を寄付していた。その姿を見て「切って捨てるものが役に立つなら」と髪を伸ばすことに決めた。
長くなった髪をドライヤーで整えたり束ねたりするのは丞さんには難しく、慧芽さんが毎日手伝った。髪を洗ったり服を脱ぎ着したり、プールに入ったりする際は面倒くささを感じた。髪が長いため女子に間違われることもあった。
それでもやめたいと思ったことはなかった。次第に学校でも理解が得られ、髪を切る前日には同級生から盛大な拍手が送られた。父の天志(ひろし)さん(43)は「目標を立てて取り組む良い経験になったのでは。粘り強くよく頑張った」とほめる。
丞さんが、腰まで伸びた髪を切ったのは5月31日。ヘアドネーションに賛同する淡路市志筑の美容院「make・a・wish(メイク・ア・ウィッシュ)」で鏡の前に座った。
「3年間も伸ばした髪。切るのはちょっと寂しい。昨日は眠れなかった」と緊張した表情の丞さん。美容師が、髪をいくつかの束に分けてカットを始めた。慧芽さんもはさみを入れ「名残惜しい」と感慨深げな様子で話し、弟を見守った。
カットが終わると、丞さんは「久しぶりに髪を短くした。頭が軽くなって、風も通って気持ちいい」と満足そうな笑顔。彩さんは「これをきっかけに病気の人に寄り添える子になったらうれしい」と目を細めた。
丞さんの髪は大阪のNPO法人に寄付し、小児用ウイッグに使われる予定。丞さんは「長髪はトレードマークだったし、中学生になるまでにもう一度ヘアドネーションをやりたい」と思いを込めた。