カットした段ボールを組み合わせて模型や人形などを生み出す「段ボールアート」の世界に、兵庫県明石市から新星が現れた。会社員の秋田崇志(たかし)さん(42)。インターネットで紹介記事を見て興味を持ち、見よう見まねで始めてみたところ、わずか3カ月後にはジブリ映画「ハウルの動く城」の城を恐るべきクオリティーで作り上げてしまった。素人離れしたセンス、さてはただ者ではないな-。(黒川裕生)
城の高さは40センチほど。映画を見た者に強いインパクトを与えた城を、「顔」や細い「脚」、丸いドーム、煙突など、細部に至るまで忠実に再現している。製作期間は約1カ月、材料費は100円程度という。
「すごいですねえ! どうやって作ってるんですか?」と尋ねても「全然終わらないので、途中で嫌になった」「図面なんて描きませんよ。画像を見ながら、段ボールを適当に切って、ペタペタ貼り合わせていくだけです」。返ってきた答えは極めてクールだ。
そんな秋田さんの作品第1号は、2017年9月ごろに作った全長30センチほどの戦車。ダンボールアーティストの大野萌菜美さんをまねてみたという。初めてながら出来栄えに手応えを感じ、その後はアニメ「宇宙戦艦ヤマト」やジブリ映画「風の谷のナウシカ」のキャラクターなどを続々と製作。洋画家高橋由一(ゆいち)(1828~94年)の有名な油彩画「鮭(さけ)」を立体化した作品もある。
これまで手掛けたのは計20点。ツイッターなど会員制交流サイト(SNS)で公開したところ、同好の士にも一目置かれる存在になった。テレビ番組から出演のオファーが来たこともあるが、「人に指示されて作るのは性に合わない」と断ったそうだ。
どれも見る人の目をくぎ付けにする完成度。「美大出身でもないし、美術部に所属したこともない」という秋田さんだが、やはり幼少期から絵には自信があったようだ。小学校時代には石に動物や魚の絵を描くと祖父が500円で買ってくれたという。
作品は全て、同市本町2にある秋田さんの実家の化粧品店「秋田屋」に陳列している。営業時間内(午前10時~午後6時)なら自由に見ることができる。秋田さんは「技術力もついてきた。いつかは個展を開いてみたい」と話す。同店TEL078・911・2130
秋田さんのツイッターアカウントは、アキタ屋#ダンボールアート(@Ram_akita)。