6月下旬、兵庫県三田市駅前町の路地裏。居酒屋「うまいもん酒房 和来」のシャッターにユニークな貼り紙を見つけた。
子供のB(バースデー)20で我が家のサミット開催の為、本日休ませて頂きます。酒脳店主。
20カ国・地域首脳会談(G20)ならぬ、長男が20歳の誕生日(B20)。時事ネタを織り交ぜた大喜利風の文章に、くすっと笑ってしまった。
「滑ってます…?」。ちょっぴり困り顔で受けを気にするのは、お笑い好きの店主高山和成さん(46)。店は不定休。工夫を凝らした貼り紙は、訪れた客をがっかりさせないようにと、2011年のオープン時から続ける。その数200枚以上だ。
高山さんいわく「最初は普通だった」。仕入れで養殖の魚しかそろわず「海が大しけのため」としたり、徳島県への家族旅行なのに「精神修行に出掛けるため」としたり。すると、常連客から「修行はどやってん」と聞かれるなど話題になってきた。「探し物を探すため」としたときには「あったか? 通りすがりより」とお便りが届いたこともあったという。
期待に応えようと、いつしか本気に。3年ほど前から鉄板になっているのが政治ネタだ。前国税庁長官の佐川宣寿氏の話題に掛けて「嫁から証人喚問を受けるため」と尻に敷かれた夫を演じ、ハロウィーンの騒動時には「倒された軽トラを起こしに行くので」と結ぶ。新聞やテレビのニュースに目を光らせ、人を傷つけない笑いを目指す。
ネタは営業終了後に考える。深夜2時まで頭をひねることもあり、力尽きて「休む理由を考えるのに休ませて頂きます」と記したこともある。滑れないプレッシャーに「気持ちは芸人です」(山脇未菜美)