5日未明に起きた兵庫県の相生、赤穂市にまたがる山陽自動車道尼子山トンネルでの車両火災は、約40時間を経過した6日午後5時半に鎮火した。西はりま消防組合(たつの市)によると、焼損したのは最初に出火したトラックと後続車の計23台に上る。早期の鎮火を阻んだのは、トンネル特有の悪条件だった。
火災は5日午前1時ごろに発生。兵庫県警高速隊によると、西行き車線を走行中の大型トラックから火が上がり、後続車に乗っていた人たちも次々と車を降りてトンネル外に避難した。
県警高速隊によると、現場は西端に近く、そばに止まった車から順に東に向かって延焼したとみられる。
西はりま消防組合と赤穂市消防本部から消防車など11台が出動したが、トンネル内部は照明が消え、黒煙が充満。天井などのコンクリート片もはがれて飛散する中、トンネル外からの放水を強いられたという。
煙を排出するため、大型の送風機を積んだ特殊車両「ブロアー車」の出動を神戸市消防局に要請。5日の夕方にようやく両方向からの進入、放水が可能になり、発生から19時間後の同日午後8時すぎに鎮圧した。
一方、熱がこもったトンネル内の気温が数百度に達する時間帯もあり、空気の冷却を待って翌6日朝に残火処理を再開。その後も一酸化炭素濃度などを考慮し、トンネル内での作業は断続的になった。
元麻布消防署長で公益財団法人市民防災研究所(東京)の坂口隆夫理事(76)は、トンネル火災の難点として、煙を排出するまでは風上の一方向からの放水に限られる点を挙げる。「視界も悪い中、奥に広がっていく延焼を前方からの放水だけで食い止めるのは非常に難しい」と指摘する。
播磨ジャンクション(JCT)-赤穂インターチェンジ(IC)間では6日夜も上下線の通行止めが続いた。西日本高速道路は「復旧作業が必要で、解除には相当の時間を要する見込み」としている。(井上太郎)