藤井聡太王位
藤井聡太王位

 藤井聡太王位(20)=竜王、名人、叡王、棋王、王将、棋聖=に、佐々木大地七段(28)が挑戦する「伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦」(神戸新聞社主催)7番勝負が、7日に開幕する。3連覇中の藤井王位が防衛を果たすか、佐々木七段が王位を奪取するのか。両対局者に意気込みを聞くとともに、深浦康市九段(51)と広瀬章人八段(36)に展望を語ってもらった。

■藤井聡太王位 多様な戦型、柔軟に判断

 佐々木七段は相掛かりを得意にされていて、序盤の駒組みのセンスが特に素晴らしいなと感じています。一局ごとに常に違う形で工夫されている印象。幅広く対応策を用意しておかなくてはいけません。

 今期の王位リーグでも、そういったところが際立っていました。中終盤においても判断が正確で、終盤は、自玉と相手玉の距離感を常に正確に計っている印象があります。

 こちらは角換わりを目指すことが多くなると思っていますが、名人戦では雁木(がんぎ)系統の将棋があらわれました。違う戦型も十分想定しなくてはいけません。最近の相居飛車の将棋は、先手番でどう攻めていくかがテーマとなっている場合が多くあります。展開に応じて柔軟に判断していきたいと思っています。序盤で大きく主導権を取られないようにして、中終盤で面白い展開になるようにしたいですね。

 王位戦7番勝負は、北海道から九州まで全国各地を回って行われる棋戦。私自身も楽しみにしています。コロナ禍で前夜祭、大盤解説会の開催が難しい時期が続いていましたが、今期は規模を大きくして開催いただくところも多いと聞いています。皆さまにお会いできることを楽しみにしています。いい将棋でしっかりと盛り上げられるようにしていきます。

【ふじい・そうた】 2002年、愛知県瀬戸市出身。杉本昌隆八段門下。12年、6級で奨励会入会。16年、四段昇段。20年、王位を獲得し現在3連覇中。23年、名人を獲得し七冠。詰め将棋で鍛えた鋭い終盤力を持つ居飛車党。

■佐々木大地七段 神経戦、じっくり濃密に

 2日制で圧倒的な強さの藤井王位との対局は、一度差がついてしまうと逆転が困難。序盤から繊細な駒組みが必要で、神経を使う勝負になると思っています。

 相掛かりは挑戦の原動力になった戦法。奨励会三段時代から工夫してきたので愛着があります。得意の相掛かりをメインに、濃密な将棋を指したいです。

 後手番になったときは、藤井王位の角換わりにどう対応するかが課題。藤井王位は全て突き詰めているので、中途半端な対策では、1日目で差がつく可能性があります。心して準備していきます。

 藤井王位ほどの終盤力があれば、不利になっても巻き返せることが多いはず。しかし序盤から最善を求め厳しい手を指してきます。いくらこちらに余裕があっても、どこから技が飛んでくるかわかりません。自分が思いつかない寄せを見せてきますし、受けも強い相手です。

 自分自身は、じっくり戦うタイプで、切れ味は全くありません。藤井王位とは対極なのかなと思っています。

 王位戦は、師匠も獲得したタイトル。精いっぱい自分の持ち味を発揮し、7番勝負を盛り上げていきたいと思っています。直接ファンの方に会える絶好の機会ですので、応援を力にかえて、この舞台で羽ばたいていきたいです。

【ささき・だいち】 1995年、長崎県対馬市出身。深浦康市九段門下。2008年、6級で奨励会入会。16年、四段昇段。19年、棋王戦挑戦者決定戦進出。23年、棋聖挑戦、王位挑戦。じっくりとした指しまわしを好む居飛車党。