音訳ボランティアによる対面朗読を聞く松森斉さん(右)。好きな中国の歴史小説は漢字が多く、読み上げ機能では誤読が多いという=明石市大明石町1、あかし市民図書館
音訳ボランティアによる対面朗読を聞く松森斉さん(右)。好きな中国の歴史小説は漢字が多く、読み上げ機能では誤読が多いという=明石市大明石町1、あかし市民図書館

 誰もが読書をしやすい環境を整備する「読書バリアフリー」の取り組みが、兵庫県明石市など各地の図書館で進んでいる。点字図書や書籍を音声化した録音図書に加え、文字の拡大や音声読み上げ機能のある電子書籍も増えつつある。一方で、ボランティアらに頼りがちな点字化や音声化の作業や、書籍のデータ化には課題もある。真のバリアフリー実現に向けた取り組みの現在地を探った。(津田和納)

 「じゃあ、読み始めますね」。あかし市民図書館(明石市)の一室で、ボランティア団体「サークル音のさんぽみち」(同)のメンバーが、落ち着いた口調で朗読を始めた。視覚障害のある人を対象にした対面朗読サービスだ。

 利用していた松森斉(ひとし)さんは病気で視力が弱まり、愛読してきた小説を読むことが難しくなった。ルーペなどを使っても「肩が凝って仕方ない」。中途障害のため点字になじみが薄く、対面朗読に出合うまで読書を諦めていたという。

 「スマートフォンの読み上げ機能は、表や写真を読み上げてくれない。人工知能(AI)は文脈を理解していないし、イントネーションや漢字の読みが違うのが気になる」と松森さん。現状では「やっぱり、機械は人には勝てない」と話す。