■もう迷わない
脱線事故の負傷者や家族らが思いを打ち明け合う「集い」には16年間、ほぼ欠かさずに参加してきた。「誰かがふらっと訪れた時、話し相手がいなかったら寂しいだろうな」。そう考えると、自然と足が向く。
兵庫県宝塚市の会社員女性Dさん(37)は、当時大学4年生。今もガソリン臭をかぐと、不安をあおられる。だが、事故のことで思い悩むことは、もうない。
直後は心が錯乱した。申し訳ないような気持ちがよぎり、自分を見失って変な風に考えてしまう。
どこかに「生存枠」があって、私が生き残ったことで、はじき出された人がいるんじゃないか-。
運ばれた病院で報道陣に囲まれても、立ち位置が定まらない。しゃべっていいのか。もっと落ち込まないといけないのか。テレビに映しだされると「なんで元気にしゃべってるねん」とネット上に書き込まれた。
取材は殺到。一緒に乗っていた友人は鎖骨を折って病院の集中治療室にいた。その後、事故とは関係なく親族が亡くなった。受け止め切れない。どういう自分でいるのが正解か、自問するほどに分からなくなった。
「私、コンサートに行ってもいいものかな」
しばらくして、集中治療室を出た友人に聞いた。不謹慎か、笑ってもいいのか…。でも、事故を言い訳に諦めたら、ずるずると引きずりそうで怖かった。
「いいやん。私に気を使わんと、行っといで」。即答してくれる友人の存在が心強かった。事故の経験も、2人でなら語り合えた。
幼少期から大ファンの松平健さん。事故前からチケットを取り、この日を楽しみに生きていた。負傷した左足は痛いのに「マツケンサンバ」が始まると、輝く舞台に向けて片足だけで跳びはねていた。もやもやが晴れていき、吹っ切れた。
私の人生は、私のもの! 事故から、自分の人生を取り戻した瞬間だった。
いろいろな考え方がある。ただ、生き残ったことに責任を感じる必要はないと結論付けた。生き残った意味があるとするなら、亡くならなければならない意味もあったことになる。それは、納得できない。
亡くなった人の分まで、背負って生きることはできない。でも、友人と2人で支え合えたように、自分のできる範囲で事故の被害者を支えたい。だから、いくら月日が流れても、集いに顔を出す。
取材を受けることにも迷いはなくなった。亡くなった人は何が起きたのかを語れない。大切な人を失った人たちは、もうその声を聞けない。自分の証言で誰かが少しでも救われるなら。全てを話すことにした。
「人生は一人前しか生きれない。これが私の一人前」。毎年4月25日が近づくと、集いのみんなでしおりを作る。「空色の栞(しおり)」。二度と起こさないでほしい、忘れないでほしい。そう願い、リボンを結びつける。(大田将之)
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