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阪神・淡路大震災で亡くなった同級生の中島祥子さんを思いながら、遺影の隣で講演した松村彩子さん=2022年1月17日午前、芦屋市新浜町、芦屋市立打出浜小学校
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阪神・淡路大震災で亡くなった同級生の中島祥子さんを思いながら、遺影の隣で講演した松村彩子さん=2022年1月17日午前、芦屋市新浜町、芦屋市立打出浜小学校
震災翌年の1996年に植えられた「祥子の木」。この日は打出浜小学校や近隣校の児童らが手を合わせて花を手向けた=2022年1月17日午前、芦屋市新浜町、芦屋市立打出浜小学校
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震災翌年の1996年に植えられた「祥子の木」。この日は打出浜小学校や近隣校の児童らが手を合わせて花を手向けた=2022年1月17日午前、芦屋市新浜町、芦屋市立打出浜小学校

 あの激震で、兵庫県芦屋市立打出浜小学校5年の中島祥子さん=当時(11)=が犠牲になった。仲良しだった同級生は2児の母になった。27年がたっても愛犬と駆け回る祥子さんが目に浮かぶ。悲しみと向き合うのはつらい。でも、亡き友の分まで次の世代に伝えないといけない。17日朝、母校で児童約490人に語り掛けた。「今をしっかり生きてください」

 講演したのは、同校の卒業生で保育士の松村彩子さん(38)。長男奏祐君(12)が在校している縁で学校から依頼された。大勢の前で震災経験を語ったことはない。でも、今も祥子さんが被災したアパート跡地の前を通るたび、胸がきゅっとなる。忘れたことはない。「震災を身近な人の体験として聞けば、子どもたちに記憶がしっかり伝わるかもしれない」。迷わず引き受けた。

 昨年12月から話す内容を考えた。最初は悲しみがわき出すばかりだった。思い出をつづると、レポート用紙は7枚に及んだ。「震災は決して忘れてはならないことだ」。改めて感じた。祥子さんとの楽しい日々がよみがえってきた。

 天真らんまんで元気でおちゃめ。心優しい女の子だった。動物が大好きで、飼い犬「ボヨ」と「ボヨヨン」をかわいがった。一緒に散歩させてくれたこともあった。「こうしたら犬は怖がらずに触らせてくれるねん」と教えてくれた。2匹をおんぶして走り回っていた。おどけた表情でみんなを笑わせてくれた。精いっぱい生きていた。

 しかしあの日、友達と楽しく遊び、学んだ「当たり前の生活」が一変した。

 激しい揺れの後、松村さんはガス臭が漂う自宅から逃げ出し、芦屋市立精道中学校に避難した。そこで、祥子さんの家族を見かけた。でも本人の姿がない。「また会えるよね」。そう自分に言い聞かせた。その後、祥子さんが亡くなったと知らされた。

 信じられなかった。翌月、学校が再開しても受け入れられなかった。当時、教師が何かを説明していたが、あまり記憶に残っていない。

 「祥子の木」。そう名付けられた木が打出浜小学校にある。96年3月、祥子さんの同級生らが植えたトチノキだ。

 松村さんも土をかぶせたことを覚えている。でも正直、今でもこの木を見ることができない。なぜなら寂しさがこみ上げてくるから。児童に訴えかけた。「私のようにつらい思いを抱えている人が、27年たった今でもたくさんいるということを忘れないでほしい」

      ◇

 「うまく伝えられるかな」。講演を引き受けた当初は不安だった。でも、これを機に保育士として、母として、震災の経験や命の尊さ、備えの大切さを語り継ぐ決意が芽生えた。

 自分自身、多くの人に支えられて生きてきた。だから子どもたちにも人とのつながりを大切にしてほしいと思った。自分自身、いろいろな気持ちになるけれど、立ち止まらず、前を向くと決めた。

 「祥子ちゃんと一緒に伝えたい」。この日、ほほえむ遺影と隣り合って座った。語り終えた松村さんは亡き友に心で語りかけた。「ちゃんと伝えられたかな。祥子ちゃん、横にいてくれてありがとう」(小林伸哉)

 友人を地震で亡くした松村彩子さんは、母校で子どもらに「当たり前」の大切さを訴えかけた。(以下、要旨)

 今、みなさんの近くにいるお友だち、家族、先生。大切にしていますか?

 けんかをしてしまったり、ちょっとひどいことをしてしまったり、言ってしまったり、傷つけてしまったり。そのようなことは時にはあると思います。でも、そのことをそのままにしてしまってはいませんか?

 「明日になったら謝ろう」「次会った時に話そう」。そう思っていることができなくなる。そうなると、生きていく中で、ずっと心に引っかかったりもします。後悔し続けてしまうことにもなります。そうならないように、今を大切に、今できることを考えて行動してほしいと思います。

 命を大切にしてください。自分の命、友だちや家族の命、周囲にいる人たちの命。生きたくても、それがかなわなかった人たちもたくさんいます。

 これから生きていく中で、たくさん悩んだり、悲しい思いをすることもあると思います。でも、きっと大丈夫です。みなさんの周りには、たくさん支えになってくれる人や、分かり合える家族や友だち、仲間がいます。そのことを心にしまっておいて、今をしっかり生きてください。

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