■三田の「欣勝寺」 水不足の地域性、水神様の使い
思い詰めた女性の情念は鬼になっても消えない、と伝える話は多い。ただ、彼女は鬼ではない別物になっていた。
「子どもには話しにくい伝承だからねぇ」。兵庫県三田市桑原の欣勝寺の谷口真弥住職(60)はつぶやき、寺の「秘宝」を撮った写真を特別に見せてくれた。
首の切れた何かの頭部が写る。鋭い牙はワニと見まがうが「大蛇」だという。
さかのぼること千年前の平安時代。夫の浮気を恨み、池に身を投げた女が、成仏できないまま寺に現れた。すすり泣いて苦しみを訴えると、高僧に諭されて悟りを開く。女は大蛇となって、裏山へと消えた。
翌日、山中で大蛇の亡きがらが見つかり、寺はその頭部を宝物として保管した。それ以来、ひとたび箱から外に出すと、地域に大雨が降ると伝わるのだ。
-なぜ、雨なのだろう。女の涙を意味するのか、と思った。すると、地元の民話に詳しい三田市職員の山崎敏昭さん(58)は「土地柄でしょう」と言う。どういうことか。
三田市域は盆地で雨が少なく、標高が高いために川の水もたまりにくい。だから、市域には似たような伝承が複数ある。北部の虚空蔵山では、白黒2体の蛇が雨を降らせる。高地にある永沢寺の秘宝「竜のうろこ」も同じで、蛇や竜は水神様の使いというわけだ。
欣勝寺の伝説には続きもある。昭和初期の1930年代半ばの夏、地元の農家山本茂さん(92)は当時小学生で、両親らが漏らした言葉を今も覚えている。
「蛇の頭、出してもらわなあかん」。日照りが続き、やかんで溝水をかき集めても稲枯れが止まらない。村で相談し寺に願い出た。
雨乞いの祈とうは山田川と武庫川の合流地で執り行われた。紅白ののぼりがたなびき、黒山の人だかりができる中、山本さんは子どもながら、いぶかしげに眺めていたと打ち明ける。
しかし翌日、本当に大雨が降った。「天の底が抜けたくらい。これで米が採れると両親も大喜びでした」
大地を濡らしたのは、女の涙雨ではなかった。人々の祈りの化身こそが、大蛇なのかもしれない。(池田大介)
【メモ】三田市内には大蛇の出没伝説が多いが、雨を降らせるばかりではない。南北に流れる青野川には、川遊びをする子どもを川底に引きずり込む大蛇がいる。一方で、市北部の井ノ草地区周辺には豪雨で田畑が水没しそうになる中、水路にうずくまって氾濫を止めた大蛇が語り継がれる。
自然は時に牙をむく。大蛇は水の恵みと恐ろしさの二面性を併せ持って伝えられている。
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