神戸新聞NEXT
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 神戸新聞北播総局(加東市社)は27日、1986(昭和61)年の開局から40年を迎えた。兵庫の真ん中に位置する広大な北播磨5市1町を受け持ち、人々の暮らしや街の移ろいを文字にしてきた。次の時代へその歩みを止めることなく、地域とともに在り続けたい。

加東の出版社経営 高橋武男さんに聞く 住民参加の紙面づくりを

 加東市を拠点に一人で出版社「スタブロブックス」を立ち上げ、地域の特長を発信している高橋武男さんに、地方紙や地域版の在り方について聞いた。

 -神戸新聞とは地元密着型メディアとして通じるものがある。

 最近は新聞、テレビに加えてSNS、動画を含めていろいろな考え方が一気に増えている。その中で神戸新聞の価値は、県内くまなく記者が走り回って情報を取る態勢があること。AIにも興味があって勉強をしているが、既にある1次情報を加工するのは得意でも、AI自身が地域に飛び出すことはできない。生身の記者が地域に張り付いて動いているという価値はますます輝くのではいか。

 -新聞への見方が厳しくなっている。

 加工される前の生の情報を両論併記で提示してほしい。判断は自分がやる、という世の中。編集力がメディアの最大の強みだが、その作業が優秀であればあるほど、自分で判断したいとの思いが強くなっているのかもしれない。新聞やテレビは大きな組織なので、権力をチェックする側が権威と見られているのか。誰が記事を書いているのかが分かりにくいのが、オールドメディアに対する懐疑的な見方の一つかもしれない。

 -高橋さんは人を軸にして魅力を伝えている。

 そこまで地元のためにとは思っていなかった。ライター、編集者としてのスキルを田舎で生かしたいと考えていた。出版社を立ち上げて6年目。「地元人」を作っている中で、本気で生きている人に興味が強くなった。出身の加東市で完結ではなく、いろんな地域とつながって各地の地元人を出していきたい。あくまでも自分の面白がりです。

 これから「人間が書く理由」みたいな本を出したい。AIではなく、なぜ人間が書くのか、と考えている。1次情報を取ってくる価値と、人間が書くことには責任があるということを。AIがまん延すると、使う使わないにかかわらず、誰が発信するのか、誰が言うのかの責任が伴ってくる。

 -印象に残っている記事や紙面への提案を。

 1月の連載「ここに住む理由」は面白かった。なぜ、ここに住んでいるのか。なぜ、移住してきたのか。広島出身の方がいた。その人たちの背景が好き。NHKの72時間のような。人間の深掘り。こんな面白い人が来ている。もっと面白い人が増えてほしい。Uターン、Iターン含めて移住してきた人をもっと読みたい。

 -新聞社も人の取材が基本。「地元人」では若い世代も主役だった。

 高校生を巻き込んだのは、新しい世代の視点を取り入れたかったから。新聞の読者も世代交代が必要。地元に根付いている新聞社であれば、若い子たちで討論を企画してはどうか。子どもたちが主役であれば親も読みたい。住民主体のリレー記事もあれば書きたい人もいる。紙面に住民が参加し、視点をあぶりだす場をつくっては。私の場合も一冊の本が錨(いかり)となって場が広がり、たくさんのイベントにつながりました。

【たかはし・たけお】1977年、加東市生まれ。社高校、関西外国語大学を卒業後、ライターや編集者としてビジネス書や旅行雑誌などを手がけた。古里に戻り、2020年に“ひとり出版社”「スタブロブックス」を設立。同市ゆかりの人々を描いた「地元人」は、日本地域コンテンツ大賞を受賞した。学生時代は陸上選手として国体などへの出場経験を持つ。

神戸新聞北播総局は小野、加西、西脇、三木の各市に支局を置き、編集責任者と記者6人が紙面を制作している。各記者が自己紹介を兼ねて北播磨への思いを綴った。

小野支局長・坂本勝 地方の現場こそ新たな発見あり

 小野支局に赴任後、3年がたった。昨秋に60歳を迎えて定年退職し、再雇用で記者生活の残りは5年間となった。「生涯一地方記者」の締めくくりを、この地で迎えられれば本望だが、果たしてどうなるか?

 出勤する週5日は支局で寝泊まりし、休みの週2日は加古川市の自宅へ。息子が高校時代に乗っていた通学用自転車を使って行き来している。主に加古川河川敷のマラソンコースに沿って片道約19キロを約1時間15分。吹きさらしの向かい風や冷たい雨、真夏の炎天下はきついが、鳥のさえずりや四季折々の花々に心を癒やされることも多い。

 取材を兼ねた小野ハーフマラソン出場も3回を数えた。実際にコースを走って初めて、ランニング仲間と出会い、沿道の声援やボランティアの心遣いを実感できた。地方の現場にこそ、新たな発見がある。そう確信している。

西脇支局長・金井恒幸 まだまだやれる気持ち送りたい

 大阪市出身の56歳。北播磨地域での勤務は2006~10年の小野市に続き、24年からは加東市、25年からは西脇市、多可町を担当している。小野市担当の時は子どもがまだ小学生で取材だけでなく、子育てでも皆さんのお世話になった。

 14年ぶりの北播勤務だったにも関わらず、以前の知り合いから何人も「久しぶり」と連絡があり、びっくりさせられた。赴任地では早速、食事会に誘われたり、「知り合いを紹介したるで」と声をかけられたりと、温かく受け入れてもらった。

 趣味は、文化部担当で習慣となった美術展鑑賞。京都、奈良を歩くこと。

 日々、心がけているのは、住んでいる方が自信と誇りを持てるような記事。人口減が進み、地域の衰えを感じがちだが、「まだまだ北播はやれるで」という気持ちになれる記事を、皆さんと見つけたい。

三木支局長・大山伸一郎 小さなニュース積み重ねていく

 北播磨は、多様な兵庫五国の中心。その中で現在担当する三木市は、神戸寄りの「トカイナカ」と言われる。

 宮崎県の郡部で生まれ育ち、子どものころ日豊本線の「汽車」に乗って街に向かった高揚感を今も覚えている。便数が少ないという声も聞く神戸電鉄粟生線だが、それでも私のふるさとのそれよりは格段に多く、使い勝手も乗り心地も不満は感じない。

 便利で豊かな自然も残るトカイナカの宿命かもしれないが、地域の社会インフラを他市や都市部と比較してうらやんだり、批判したりしがちだ。メディアにその責任の一端があることも承知の上で、地元愛が正しく未来に向かうよう、この地に向き合いたい。

 1枚の切符が確かな将来につながるように、小さなニュースの積み重ねが大きな信頼につながっていると信じている。

三木支局員・小西隆久 故郷広島より故郷に感じる

 「生きることは、闘いよ」。好きな映画の「グロリア」(米、ジョン・カサベテス監督)の主人公の女性が、命を助けた子どもに言い放つせりふだ。

 新聞記者になって20年余り。いろんな人たちの話に耳を傾けるたび、その言葉が頭に浮かんだ。家族を失った犯罪被害者、避難所に身を寄せる家族、不条理な仕組みで社会の隅に追いやられた人々…。

 2度目の勤務となる北播磨地域で取材していると、一度は必ず「北播は記事になることが少ないでしょう」と言われるが、そんなことはない。人がそこで生き、暮らしているだけで何かのニュースは生まれる。

 生まれ育った広島を出て30年が過ぎ、故郷よりも故郷のように感じる北播磨の風景や人々の気質が大好きになった。第2、第3の故郷を感じられる記者であり続けたい。

加西支局長・村上晃宏 「地域の応援団」胸にこれからも

 春、加西市の屋台蔵から「ドン、ドン」と重低音が響いてくる。その音を体で浴びると、祭り好きな播州人の血が騒ぐ。

 加西市生まれの37歳。加東市の兵庫教育大学付属中学校、小野市の小野高校を卒業した。村上家の墓は西脇市にあり、三木市のカラオケ屋が高校時代の遊び場。北播磨地域にどっぷり浸って育った。

 約20年ぶりに帰ってきた「ふるさと」だが、知らないことばかり。加西のイチゴ、小野のイチジク、加東のモモ、西脇の黒田庄和牛、多可の播州百日どり。北播磨の魅力を知らなかったことを申し訳なく感じている。食べ物の話はここまで。

 人口減少に悩む北播磨地域だが、取材で会う人たちの熱意は決して他地域に負けていない。「地方記者は地域の応援団」の思いを胸に、これからも頑張りたい。

北播総局員・井筒裕美 地域とともに「一杯」が一番

 仕事終わりに地元の皆さんと飲むお酒が一番だ。自宅で一人、自炊のおかずをつまみに飲んでも酔わないし楽しくない。酒米の王者・山田錦を使った、神結酒造(加東市下滝野)が醸す酒がいい。会話に花が咲いて、相手の空いたおちょこに気付かずにいる。取材力よりも注ぎ足し力を磨かねば…。

 お酒でなくても、同じ時間を過ごさせてもらっている。朝に三草山に登ったり、午後に播磨やしろ茶を囲んだり。加東に住んで1年余り。乾杯や言葉を交わすたび、大事な人が増えていく。うれしさもあれば、いつか訪れる別れがさびしくなる。

 約3年前、就職活動中に出会った記者が言っていた。「地方記者は地域とともに生き、地域とともに死ね」。大事な皆さんと喜びもつらいことも共有し、その瞬間を紙面に残していきたい。

北播総局長・東方利之 街を潤す記事心がけ

 神戸新聞北播総局が40年の節目を迎えられたことは、読者や地域の皆さまによる支えがあってこそです。

 北播総局は1986(昭和61)年3月27日、東播支社(加古川市)から独立し、神戸新聞社7番目の総局として加東市社に拠点を構えました。同時に西脇、小野、加西の3市と加東、多可の2郡7町をエリアとする地域版「北播版」が誕生。その後、三木支局が報道部から移管され、現在は北播磨5市1町を4支局体制で取材し、「北播版」と「三木北播版」を編集しています。

 地方紙の役割は、住民とともに街の魅力を高めていくことだと考えます。これまで多くの記者が北播磨で人々と出会い、学び、成長する場となりました。今後も地域目線を忘れず、北播磨を潤す紙面作りを心がけます。