「ハイブランドの転売なので元金も利益も返ってくる」。こんな誘い文句で大学生2人に身分を偽ってローンを組ませ、不正購入した高級腕時計ロレックスを転売したとして、兵庫県警は今春までに、詐欺容疑などで20~40代の男女11人を逮捕した。資産価値が高まり、市場が急拡大したロレックス。県警組織犯罪対策課は、車や家電などに比べて高値で転売しやすいことから、不正なローンの現金化に悪用したとみている。
11人は「勧誘役」「指南役」「仲介役」に分かれていた。勧誘役と指南役は互いの存在をはっきり把握しておらず、仲介役を通じてLINE(ライン)で連絡を取り合うだけだった。県警は匿名・流動型犯罪グループ(匿流)とみている。
「腕時計を渡したら連絡が取れなくなった。もうかるはずが…」。事件は2024年春、20代の大学生男性が県警に相談したことで発覚した。
男性は約2カ月前、知人の女から「もうけ話」に誘われた。紹介された勧誘役、仲介役、指南役の男3人とラインでつながり、免許証の写真を送信した。
教わったのは、こんな手口だ。職業や年収を偽ってローンを組み、販売店でロレックスを買う。それをグループ側が受け取り、転売する。「購入額の6割」が男性の取り分となる-。
男性にはローン債務が残るため、踏み倒さなければ利益が生まれない。だが「即金で渡す」と言われ、まとまった現金がほしくて応じたという。
24年2月、インターネット通販で人気モデル「GMTマスター2」を約257万円で買った。さらに指南料30万円と、次の腕時計を買う資金として100万円をグループ側に支払った。
届いた腕時計は、指示された通りに朝来市内で初対面の男に渡した。購入額の6割、約154万円が分け前になるはずだった。だが、その後グループは音信不通に。だまされた男性は約400万円を失った。
仲介役の男は、腕時計を「購入額の85%で転売した」と供述した。約220万円になる計算だ。これを勧誘役の男、指南役の男と計3人で分配していた。
グループは別の大学生にも約194万円のロレックスを虚偽申告のローンで買わせ、転売した金を本人に渡さず山分けしていた。
ローン債務を借り主に押し付け、詐取した物を現金化する-。捜査幹部は「手口はシンプルだが、分業制のため全容がつかみにくかった」と話す。グループの一員は、ロレックスを使った理由を「希少性があるので値段が下がりにくく、すぐに現金化できるため」と供述したという。
別の人物に資金が流れた形跡がないことなどから、県警は上位者がいないと判断している。
■価格急騰、投資対象に
高級腕時計の代名詞とされるロレックスは、2019年ごろから「投資対象」として需要が高まり、価格が急騰。ピークの22、23年ごろは「ロレックス・バブル」と呼ばれ、正規店価格の数倍で取引されていた。
腕時計は不動産より管理や転売がしやすいことから、投資需要が高まったとされる。新型コロナウイルス禍で資産運用ブームが起きたことも拍車をかけた。
中でもロレックスは希少性と実用性を兼ね備え、世界的に需要があった。神戸市内の買い取り店の男性店長は「現物資産の中でも希少性が高い」と指摘する。
こうした状況から事件も起きており、高級腕時計を所有者から預かって第三者に貸し出すサービス「トケマッチ」を巡っては、預かった時計を詐取、無断売却した疑いで、運営会社の代表らが逮捕されている。
近年は相場が頭打ちになったが、主要モデルは高値を維持。転売目的で買う人も後を絶たず、品薄が続いている。男性店長は「今後も高止まりで推移するのではないか」と話した。
























