能登半島地震で被災した人々に向け、美術団体「花いちりん描く会」(神戸市東灘区)が、阪神・淡路大震災の体験談を集めた冊子の無償提供に取り組んでいる。柔らかなタッチで描かれた花の絵も差し込み、同会代表の画家、立岡佐智央さん(73)=同区=は「花は美しいだけでなく生命力がある。復興の長い道のりの中で、心寂しくなった時に目にしてもらえたら」と思いを込める。(名倉あかり)
29年前、立岡さんの自宅は地震で半壊。宮城県からやって来た高校生のボランティアがバケツリレーをして割れた池からコイを運んでくれた。「真心がこもった助け合いは、いくつになっても忘れない」と感謝する。
地震直後は前を向くことに精いっぱいだったが、発生から数カ月たった頃、花や文化を求める「心の飢え」を覚えた。会館などで開いた花の絵を描く講座は被災者から好評で、花が持つ癒やしや励ましの力を実感したという。