2月のテーマは、強迫症です。神戸市の福原野乃花さん(22)は小学生の頃から、強い不安や恐怖に襲われたり、手や体を洗い続けたりする症状に苦しんできました。「やめたいのにやめられない」。浴室に6時間こもったこともあるそうです。治療を始めて症状が改善し、強迫症がテーマの映画を制作した福原さんに話を聞きました。
-何かきっかけが?
「小学2年の時、身近な人を『うっとうしいな』と思っちゃったんです。大事な人に対して、なんてひどいことを思ってしまったんだろうと、不安や恐怖が押し寄せてきました。そうじゃない、私は悪い人間じゃない、と繰り返し考えることがその日から始まりました。でも、不適切な言葉を思い浮かべちゃいけないと思うと、逆に浮かんできたりして…」
「小学3年では、手に悪い物が付いてるんじゃないかと思い、何回も洗うようになりました。4年になると、誰かを傷つけたらどうしようという加害恐怖が強くなって、はさみも触れなくなりました」
-中学では?
「気にしないようにして、普通に過ごせていた時期もありますが、3年の冬、手に危険な物が付いているという恐怖に襲われました。やりすぎと分かっていても、手の皮がむけても完璧に洗いたい。他の子は受験勉強をしているのに、私は手を洗っていました」
「高校も勉強どころじゃなくて。自分の中に強迫という悪魔がいて、それに命令されている感じ。やりたくないのに、お風呂で3時間ぐらい体を洗っていました。現実を生きている感じがしませんでした」
-その後は?
「映像が好きで、大阪芸術大学短期大学部に進みましたが、コロナ禍で家にいる時間が長くなって、お風呂は6時間に。心の中では『助けて』と何百回も悲鳴を上げていたけど、誰にも言えませんでした。卒業制作があるのに、お風呂や手洗いに時間がかかって欠席や遅刻。ずっとこうして生きていくのかなと思った時、もう言おうと決めて、大学の相談室の人に話しました。『今までよく頑張ってきたね』という言葉に救われました。病院を受診して、投薬や行動療法に取り組み、今はお風呂は40分になりました」
-高校時代の実体験を元にした自主制作映画「悠優の君へ」を作り、ユーチューブでも強迫症のことを発信していますね。
「自分と同じように苦しんでいる人は多分います。『1人でどうにかしようとするんじゃなく、人に頼って』と伝えたいし、この病気のこともっと知ってもらいたくて」(聞き手・中島摩子)