姫路市教育委員会がまとめた「人権教育の道標」=姫路市役所
姫路市教育委員会がまとめた「人権教育の道標」=姫路市役所

 4~10日は人権週間。姫路市では、教員の部落差別(同和問題)への理解を深めようと、同市教育委員会が部落差別の歴史や差別解消の取り組みをまとめた資料「人権教育の道標(みちしるべ)」を作り、活用を進めている。教育現場で部落問題を扱う機会が減り、教員間で認識の差異が生じている実情に危機感を覚えた市教委が「先生のよりどころになる資料を作ろう」と、有識者の助言を得ながら作成した。(真鍋 愛)

■背景には教員たちの危機感があった

 「-道標」は、市教委人権教育課が4月に発行した。多忙な教員に毎日少しずつでも活用してもらえるよう、部落差別の事例や差別解消に向けた運動、現在の課題などをQ&A方式で紹介している。

 項目に関連する国や自治体のウェブサイト、研究論文などが読めるQRコードも各ページに掲載。関心を持った教員が知識を深められるよう工夫した。

 作成の背景には、市教委職員や部落問題に携わってきた教員たちの危機感があった。同市では戦後の部落解放運動や同和教育の高まりを受け、1970年に教員の自主研修会「市中学校区群人権教育研修会(中人権)」が発足。現在も活動を続けている。

 しかし、国の特別措置法の終了や人権課題の多様化に伴い、同和教育への認知が全国的に低下。「中人権」でも、教員間の知識に差が生まれていた。一方、市教委が部落問題などの課題をまとめた冊子「人権教育ハンドブック」は発行から約20年が経過し、教員が指導の下敷きにできる資料が不足している現状もあった。

 同課の西田達也係長(53)は「人権教育は地味だがなくてはならない。その大きな柱である同和問題を、今こそ考えるべき思った」と振り返る。

 「-道標」は、教員のポータルサイトにアップロードし、手軽に閲覧できるようにした。校内研修で活用されているほか、今年8月には「-道標」を使った任意参加の研修を初めて開き、教職員約60人が実習に取り組んだ。

 作成を担当した同課の藤井克憲さん(44)は「資料は内容を適宜更新する予定。困難な立場にいる子どもが能力を高められるよう、先生や私たち職員も学びを深めないといけない」と力を込める。